Database blog on new types of human rights violations and covert crimes
Friday, June 20, 2025
中西董『米英軍占領下の名古屋』
森良雄『日本刀受難記』
東京: 創栄出版 星雲社(発売); 1998.
占領軍の本土進駐以来、占領軍兵士による暴行略奪が各地で多発しました。九月七日の朝日新聞によれば、神奈川県下では米兵が横須賀に上陸した八月三十日から九月五日までのわずか七日間に、九百八十六件の事件が発生したことを日別・種類別に分けて伝えています。参考までに強盗まがいの事案について見てみますと、
…物品強奪 百四十三件
自動車強奪 百二十八件…
警官からの帯剣強奪 四十一件
金銭強奪 三十七件
となっていて、占領軍司令部に事故防止を申し入れたところM・P(憲兵)を要所要所に配置して秩序維持を強化してくれた、と報じています。(p.p.113-114)
しかし、地方では、東京地区同様に保護指令が出されたはずですが、これが守られず、旧家や社寺の宝物とされていた刀剣類が占領軍兵士によって略奪されるという事件が発生しています。(p.116)
…日本近代郷土史研究所理事長の中西董氏には「米軍占領下の名古屋」と題した著書があります。…同所の第10章「戦利品や賠償物資の海外代流出」には刀剣接収時の模様が生々しく描かれています…。
米軍は名古屋進駐三日目にして…「資産階級の家庭には通訳を同伴してジープで直接乗り付けて家宅捜査を実施した…相次ぐ空襲で焼き出されて裸同然になり、ほとんど何も残っていなかった」名古屋を離れて、「戦災の被害が少なかった地方都市に目をつけ、関、大垣、米原、津、宇治山田、岐阜、高山、各務原、瀬戸方面まで足を伸ばして戦利品の宝探しを始め…先祖代々から伝わる…刀剣類を…一枚の受領証も交付せずに持ち去られてしまった。
…(米軍の)特捜隊は、戦時中に熱田神宮本殿の裏側に極秘で構築された堅牢な地下室の宝物収蔵庫を厳重に立入り捜査した。そして奉納されていた軍刀のすべてを没収した。その数は約百五十本余りもあり、米軍トラックに積み込まれ」さらに「ご神体である草薙剣をはじめ、その他の由緒ある古代刀なども武装解除の対象物件として強引に接収しようとした」…。
日本側は通訳(中西氏の父君)を介して日本の歴史や伝統を引用しつつ、草薙の剣は「日本人の文化と伝統のシンボルとなっている貴重な最高の歴史的文化遺産」であることを説明し、「もし米軍が三種の神器の一つである草薙剣を没収すれば、日本国民はもう黙ってはいない。恐らく日本各地でゲリラ戦や大暴動が発生し、再び日米双方でおびただしい数の死傷者が出る事は確実である」と主張します。結局神社側は「奉納された刀剣類の中から、金色の装飾がほどこされた大型の太刀を適当に選んで草薙剣のレプリカと偽って、唐織りで作られた豪華な雲龍模様の太刀袋に入れて米軍に提出」します。ところが、これを見た米軍兵士たちはますます本物を欲しがって「地下室まで入り込んで徹底的に捜査を実施した。その結果、むしろに包んで隠してあった年代物の刀剣類を見つけて、その中から宮司や通訳らが制止するのも聞き入れず、刀の柄や鞘の装飾が華麗に施された外人好みのする太刀ばかり、数本を選んで大量の軍刀と共に持ち去ってしまった。」
(p.p.116-118)
略奪であったにせよ、神宮の任意提出であったにせよ、神宮保有の刀剣が戦前に比べて激減していることは確かです。(p.119)
Thursday, June 12, 2025
木元寛明『気象と戦術』
Kimoto, H. (2019). 気象と戦術 : 天候は勝敗を左右し、歴史を変える. SBクリエイティブ.
気象という名の「兵器」
吉田敏浩 『横田空域』
根本的な相違点として沖縄県の「他国地位協定調査中間報告書」があげるのは、ドイツもイタリアも、「自国の法律や規制を米軍にも適用させることで自国の主権を確立させ、米軍の活動をコントロールしている」点である。
…「横田空域」と「岩国空域」での航空管制を日本政府は米軍に「事実上、委任」している。国内法である航空法には、外国軍隊に航空管制を委任できる規定はない。…密約が国内法を超越していることになる。
Wednesday, February 19, 2025
森永卓郎,et al 『日航123便はなぜ墜落したのか』
日航123便の墜落からわずか41日後の1985年9月23日、先進五ヶ国の大蔵大臣、中央銀行総裁は、ニューヨークのプラザホテルに集結し、過度のドル高を是正するために為替市場に協調介入する声明を発表した。「プラザ合意」である。
…1985年に42兆円だった日本の輸出総額は、86年に35兆円、87年には33兆円と急減。
…当然、ドル安になったアメリカは逆に、国際競争力を取り戻す流れをつかんだ。(p.p.128-129)
…1986年9月2日、123便墜落の約1年後には、もう一つ、日本には明らかに不利な政策が決定された。日米半導体協定の締結である。…要するに、「アメリカに市場を開けろ。そちらの価格はアメリカが決める」という要求を日本は、なぜか呑んだのである。
1980年代半ば以降、日本の半導体産業は世界シェアの50%を占め、NEC、東芝、日立製作所と、日本企業がトップスリーを独占していた。
…日米半導体協定には「秘密書簡(サイドレター)」が存在。…日本市場で外国製品のシェアを5年以内に20%にするとの合意があった。これはGATTの協定に明確に違反する。(p.p.130-131)
Sunday, January 19, 2025
吉田敏浩 『「日米合同委員会」の研究』
Yoshida, T. (2016). 「日米合同委員会」の研究 : 謎の権力構造の正体に迫る (Dai 1-han). 創元社.
たとえば「横田空域」という、首都圏を中心に一都九県の上空をすっぽりとおおう広大な空域があります。そこは日本の領空なのに、日本の飛行機が自由に飛べず、米軍が戦闘機の訓練飛行や輸送機の発着など独占的に使用しています。
…つまり事実上、日本の空の主権が米軍によって奪われている。しかもそのことに国内法上の根拠がない。日米地位協定にも法的根拠が明記されていない。そのような独立国としてあるまじき状態が、独立回復後、六〇年以上も続いているのです。(p.p.1-2)
これらの密約は米軍関係者を特別扱いする甘い事件処理を生みだし、米軍関係者の犯罪の起訴率がきわめて低いという現実をもたらしています。そして、この程度なら罪に問われることはないという意識を米軍関係者の間にはびこらせ、後を絶たない米兵犯罪の温床になっているのです。(p.p.2-3)
こうした日米合同委員会の合意文書や議事録はすべて原則として非公開です。国民の代表である国会議員に対しても秘密にされ、主権者である国民・市民の目からも隠されています。ごく限られた高級官僚たちが在日米軍高官らと密室で取り決めた秘密の合意(密約)が、日本の国内法(憲法体系)を侵食し、日本の主権を侵害しているのです。合意がいったいいくつあるのかさえわかりません。日米合同委員会の文書・記録として処理すれば、すべては闇の中に封印できる仕掛けになっているのです。
…日米合同委員会では、協議といってもアメリカ側の米軍人が強硬に主張したことは、日本側の官僚たちによって、ほぼすべて受け入れられているのが実態…米軍上層部から見れば、日米合同委員会は日本における米軍の特権を維持するためのリモコン装置のようなものといっていいでしょう。(p.4)