Wednesday, December 18, 2019

石井光『医者の嘘』

Ishii, H. (2014). Isha no uso: Isha wa jibun no tsugō de uso o tsuku. Tōkyō: Gentōsha. 

内科で稼げない医者が心療内科を開業する

いま、内科医が新しく開業しても、患者はなかなか来てくれません。すでに持病のある人は、どこかのクリニックや病院に通っていますし…薬局で風邪薬を買って自分で治そうとするので、風邪の患者も減っています。結局、患者が集まらないので改行してもすぐに廃業に追い込まれます。
そこで内科医は仕方なく心療内科クリニックを開業するのです。…しかし心療内科は内科の一部であって、医者はうつ病に関する専門的な臨床経験を積んでいません。


日本は世界一、抗うつ剤が売れる国

…その理由は、心療内科医が気軽に処方しているからだと私は思います。…医者は抗うつ剤を処方するためには、患者をうつ病と診断しなければなりませんから、うつ病患者の数がどんどん増えることになります。
…私は十数社の産業医をしています。社員が休職すると、必ず診断書を提出することになっています。診断書を見ると、うつ病が非常に多いのです。その社員と面談してみると、うつ病が専門ではない私でも、おかしいと感じることがあります。その場合、私が信頼している精神科の専門医にセカンドオピニオンを求めます。すると、別の診断名が出ることがあります。(p.124-126)

Tuesday, December 17, 2019

由井寅子『毒と私』

Yui, T. (2011). Doku to watakushi. Tōkyō: Gentōshamediakonsarutingu. 

「山口市の助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。
助産師は自然療法の普及に取り組む団体に所属しており、錠剤はこの団体が推奨するものだった。 …」(『読売新聞』2010年7月9日)


名前こそ出ませんでしたが、記事本文中にある助産師が所属する団体とは、日本ホメオパシー医学協会のことです。記事は明らかに私たちを非難する方向性で書かれていました。
記事の内容は私たちの把握している事実とは異なっていました。事実は、…母親がビタミンKの投与を不要だと言うので、ではせめてレメディーを、と与えただけだったのです。
(p.p.104-105)


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2011年3月2日から5日にかけて、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンなどを同時接種した子どもたちの死亡事故が5例起きました。
…厚生労働省は事故を受けて、一時的に接種を見合わせるよう通達しましたが、医師など専門家による「接種と死亡に直接的な明確な因果関係は認められない」との結論を受けて、接種再開を決めました。誰が見たって「因果関係」がないはずはないのですが、「直接的」で「明確」でないためにうやむやにしてしまおうという魂胆でしょうか。

(p.160-161)

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予防接種法は、GHQの意向を受けて194年に厚生省が作ったものです。これは政府の文書にも記録されている事実です。…ちなみにアメリカで予防接種プログラムの決定システムができたのは、1964年です。日本人で人体実験を十分に行ったうえで満を持して推進したのでしょうか。…今もなお、インフルエンザの集団予防接種をとりいれるかどうかなどの議論で、日本の「先進的」な過去の試みを参考にしていると言われています。
日本では、予防接種の拙速な施行によって、公布された1948年には早くも被害者が現れました。メーカーのミスによってジフテリア・ワクチンに毒素が残ってしまい、このワクチンを接種した子どもの中から83名の死者が出たのです。(p.p.190-191)

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…立石和さんの書いた『「元祖」野菜スープ強健法 ガン細胞も3日で消えた⁉』は1994年3月に発売されるやいなやベストセラーとなりました。翌月には医師が野菜スープの効果を追認した便乗本まで出版されたほどです。
ところが、出版から3か月後、立石さんは突然、逮捕されてしまいます
…実は私は日本でホメオパシーの普及活動を始めた頃に、この立石さんの友人にお会いしたことがあります。彼は私に次のように忠告してくれました。
「気をつけてください。自然健康法は、必ず叩かれます
その言葉通り、ホメオパシーへのバッシングが、マスコミとネットを使って行われました。…ホメオパシーが広がると困る人たちいるだろうことは想像できます。
マスコミが決して中立ではないことは、正力松太郎氏がCIAの意向に従って原発を推進してきたことからもよくわかります。(有馬哲夫『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史―』)
(p.p.194-195)

Wednesday, December 11, 2019

甘利俊一 『脳・心・人工知能』

Amari, S. (2016). Nō, kokoro, jinkō chinō: Sūri de nō o tokiakasu

心を読む ――脳と機械を結ぶ技術BMI

脳科学は、脳の仕組みを明らかにしたい。もし脳内の情報が外部から読み取れるなら、研究が大いに進む。こうして登場したのがBMI(Brain-Machine Interface)である。

…さらに、外部から脳に情報を直接に入れることができれば、これもまた素晴らしい技術が作れる。目の見えない人の脳に、視覚情報を直接送ることができるようになるかもしれない。現に人工内耳は、聴覚細胞を直接に刺激して外の情報を脳内に送り込む。


…BMIは脳内の情報を取り出して解読し、また、脳に情報を直接送り込む技術の総称である。脳内から取り出した情報をコンピュータで解読し、これを処理して再び脳に送り込めば、脳とコンピュータをつないだ仕組みができあがる。アメリカの軍事技術として誕生したとはいえ、これは脳科学、そして現代社会に大きな影響をもたらす技術である。(p.p.219-220)

ATR脳情報通信総合研究所の川人光男に代表されるグループは、脳の活動の情報をただそのままフィードバックして知らせるのではなくて、しかるべき部位の脳情報を解読してこの情報[いまが望ましい状態にいるか否か]をフィードバックする技術を開発した。…これを「脳情報複合フィードバック法(DecNef:Decoded Neurofeedback)」という。(p.221)

…斜め30度の線分を検出する[脳内の]部位のニューロンが活動したとしよう。脳は必要なとき以外にもいろいろな活動を行っているから、これは線分を見ていないときでも起こるし、他の角度を見ているときや安静時にも起こる。

被験者には何を測定しているのかを知らせることなく、この脳内情報を解読して、30度の線分に対応するニューロン活動があれば、いまはよい状態、そうでなければ悪い状態であることを知らせる。

被験者は何がよいのか、何を基準としているのかはまったくわからない。それでも、このように状態のよい・悪いを知らせることで、この被験者の30度の線分に対する検出の感度がわずかとはいえ上がり、これが何週間も保持される。脳の回路のシナプス結合に変化が起こり、ダイナミックスの特性が変わったといってもよい。脳への介入である。(p.222)

心を操作することも可能になる

脳は驚くほどの可塑性があり、脳内のシナプス結合は常時変えられる。…そこで、脳の情報を解読し、その状態が何に対応する[反応している]のか、その[状態にあることの]良し悪しを[実験者が]決めてフィードバックすれば、[被験者の]脳はその方向に[シナプス]結合を変えていくというわけである。…これだと、何をフィードバックしたのかが本人にわからないうちに、特定の情報に適合するように脳を改変できることになる。

女性の顔写真を何枚か準備して被験者に見せたとしよう。被験者は、写真を見てどの女性が好きであるかを答える必要はない。ただ、実験者がある女性の顔を見たときに被験者に起こる脳内活動をよい状態であると、仮に決める。そして被験者の脳内にこのパターンが起こるたびに、これを好ましい状態として、いま何を見ているかには関係なくフィードバックしていく。
すると、被験者には何もわからないうちに、実験者が決めた特定の女性に対する好感度が上がり、これがある期間保持される。つまり、誰かを好きになるという感情を、本人が知らないうちに操作できてしまうのだ。(p.223)