Saturday, September 28, 2019

白石拓 『透明人間になる方法』

 -- スーパーテクノロジーに挑む
Shiraishi, T. (2012). Tōmei ningen ni naru hōhō: Sūpā tekunorojī ni idomu. Tōkyō: PHP Kenkyūjo. 

念じてコンピュータを操作

二〇〇九年にはホンダのロボットASIMOを脳で念じて動かす実験に成功した。…「近赤外光脳計測装置(NIRS)」と脳波計測の二つを併用して、被験者の脳神経活動の読み取りを強化した。NIRSは、近赤外線を頭蓋から照らし、脳に当たって反射する光を捕らえて、脳血流の変化を計測する装置である。
被験者はまず「右手」「左手」「足」「舌」の単語について、それぞれ自分のイメージを思い浮かべる練習をする。…そして、そのときの神経活動データを蓄積し、計測データから単語を特定するアルゴリズムを構築した。こうした結果、被験者が「左手」(のイメージ)を思い浮かべただけで、ASIMOが左手を上げる動作をすることに成功した。(p.p.40-41)

脳リーディングを利用した犯罪捜査

たとえば、被験者を尋問する際、犯人しか知り得ない事実や写真を提示すると、被疑者がもしそれを知っていればP300という事象関連電位[脳波]が発生する。P300の発生も不随意で、被疑者が「知らない」と答えても記憶と合致すると必ず出るのでウソをつくことができないのだ。(p.49)

脳内の映像を読み取るfMRIと認識パターン


さらに二〇一一年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の西本伸志研究員らのチームが、やはりfMRIを使って、映画の予告編を見ている被験者の脳活動を読み取り、ぼんやりとした映像ではあるものの、動画の再生に成功した。…この技術を使えば、人が見ている夢や空想していることをディスプレイに映し出すことも不可能ではない。脳リーディングの技術は確実に進歩している。(p.53)

Wednesday, September 11, 2019

亀岡修、百瀬孝 『よみがえる戦前日本の全景』

Kameoka, O., & Momose, T. (2015). Yomigaeru senzen nihon no zenkei: Okurete kita kyōkoku no seido to shikumi. Tōkyō: Mainichiwanzu. 


非常に強力だった警察の権力

…悪名高い特別高等警察(当初は特別高等課)が警視庁につくられたのは、一九一一年(明治四四年)です。こちらは各種社会運動の取り締まりを任務にしたので「思想警察」ともいいました。…彼らはスパイを潜入させ、拷問を行い、法を乱用しましたが、それは当時の世界の警察では当たり前のことで、特別高等警察に限りませんでした。
 また、全国の特高を統制していたのは内務省警保局の保安課で、全国の特高課長人事を握り、全国一斉検挙などの指令を出していました。戦後、特高警察官は一斉罷免になっていますが、保安課長と所属員は内務事務官という名であって警察官ではなかったため、罷免には該当しませんでした。ただし、課長は自発的に辞職しました(のちに復活)。 (p.p.57-58)


米兵による自動車強盗事件

[米軍]先遣隊が入って早くも三日後には、進駐軍による強盗事件が発生しています。
一九四五年(昭和二〇年)八月三一日、夜。大蔵省主税局長の池田勇人、大日本麦酒(現アサヒビール)常務の山本為三郎が、大蔵次官を辞めたばかりの田中豊を誘い、銀座の牛鍋屋で送別会を開いたあとのこと。三人の乗る車が米兵に止められます。手には大型拳銃を持っており、「降りろ」といわれ、三人と運転手、そして助手席にいた大蔵省課長の前尾繁三郎はすぐに降ります。代わって米兵たちが乗り込み、猛スピードで走り去りました。


…このとき国民が最も不安に感じていたことが、そういった略奪と、米兵による婦女子に対する暴行です。…イの一番に進駐してきた横浜界隈からは大量の避難民が流れ出し、京浜国道にひしめき合ったといいます。田舎に逃げ出そうと上野駅や新宿駅も疎開騒ぎのときのような混雑だったそうです。…心配したほどではなくても、やはり強姦事件は起きていますし、その防波堤をつくろうという動きも起きています。(p.p.264-266)