Monday, April 25, 2016

秋岡史 『ストーカー犯罪』

: 被害者が語る実態と対策

Akioka, F. (2003). Sutōkā hanzai: Higaisha ga kataru jittai to taisaku.

(3)相手不明型 

もしかしたら、家の前を歩いている見知らぬ男がストーカーかもしれないし、買い物中に隣にいる男かもしれない。また、電車の中で目の前に立っている男かもしれないし、近所の誰かもわからない。これでは人間不信や心身症になっても不思議はない。(p.66)

(4) 嫌がらせ型

ストーカーには恋愛感情がまったくない場合だが、一連のストーキングが繰り返され、エスカレートする場合だ。(p.70)

警察は何もしてくれない

東京都に住む自営業の信子さん(三〇代)は、八年ほど前から正体不明のストーカーからの、電話による悪質な誹謗中傷に困り果てていた。・・・警察にも訴え、被害届も出した。・・・しかし、警察は・・・実際には何もしてくれなかった。

千葉に住む会社員の朋子さん(三〇代)は、数年前から元同僚の男性につきまとわれて悩んでいた。・・・相談するようにすすめられて行った管轄警察署では、「ここでは、事件がおきなければ何もできない」と言われ・・・途中でほかの警官たちが入ってきて、「ストーカー?もてるね」とか、「肉体関係はなかったの?」などと興味本位に声をかけられる始末だった。(p.p.84-85)

二〇〇〇年春ごろのことだ。東京都に住む多加子さんは、相手不明のストーキング被害で二年以上も苦しんでいた。そのストーカーが警察に検挙された。
・・・警察署では、被害者の取り調べと称して、ストーカーの家宅捜索で押収した個人的な写真やビデオテープまで見ることになった。多加子さんは抗議したが、部屋には担当者以外の警察官までが集まってきた。そして、大勢で集まって興味本位に見たあげく、ビデオを見て興奮した警察官の一人は、多加子さんにセクハラめいた言葉をかけて身体にまで触れてきたいう。
 ・・・そのうえ早朝の電話で呼び出された警察では、一日がかりで夜遅くまで長時間の捜査につきあわされていた。そのあげくに、被害とは関係のないプライベートなことで、周囲の警察官からも性的な嫌がらせを受けた。(p.87)

 
ストーカーの素顔

・・・(ある人物が)ストーカーだとわかったとき、第三者の反応は「やっぱり」というより、「まさか」という場合が多い・・・ほとんどのストーカーはむしろ職場や第三者の前では「いい人」でとおっていることが少なくない。(p.101)


相談者が語るストーカーの特徴

<ボーダーライン[境界性]人格障害>と呼ばれる類型が・・・ストーカーには多いと言われる。・・・対人関係でトラブルをおこしやすい傾向が指摘されている。他人に迷惑をかけても、自覚症状がないのがこのタイプに多いという(p.p.102-103)

精神的被害は変化する

ストーカーの要求を受け入れればストーキングをやめるのではないかと期待[して要求に合わせようと試みる時期]がある。ただし・・・ストーカーの言いなりになっても被害がやむことはほとんどない。

・・・ほとんどの被害者が経験するのが、ストーカーに<仕返ししたい>とか<殺したい>といった過激な考えだ。しかし、絶対に個人でストーカーに反撃したりしてはいけない。自分が傷つく危険性があるのはもちろん、事件でもおこせば被害者のほうが犯罪者にされてしまい、事実関係を複雑にしてしまうからだ。(p.p.181-182)

無理なくマイペースで

被害者同士で話をしたり・・・気持ちを切り替える・・・支えあえば勇気がわくこともある。辛いのは自分一人ではない、もっとひどい被害者の力になりたいという思いが、気持ちを強くするのかもしれない。そして、今はいつ終わるかもしれないと思う辛い症状も、時間をかければかならず終わりがくることを信じて、気長に闘ってほしい。(p.183)

Sunday, April 10, 2016

フランク・スウェイン 『ゾンビの科学』

:よみがえりとマインドコントロールの探究
Swain, F., & Nishida, M. (2015). Zonbi no kagaku: Yomigaeri to maindo kontorōru no tankyū. Tōkyō: Intāshifuto.

(How to Make a Zombie: The Real Life (and Death) Science of Reanimation and Mind Control)


すべては脳のなかに

人の右の扁桃体を、電極を用いて人工的に刺激してみると、その人はだんだんに恐怖や怒りを感じはじめ、やがてその気持ちは隠しておけなくなるほど大きく膨らむ。感情のダムが決壊すると、ふつうは外の刺激に攻撃の矛先を向ける。・・・電極をはずしたあとにも感情は残り、多くの場合は驚くほど長く続く。(p.116)

隠れ家に踏み込む

ドイツの神経学者エドワルド・ヒッツィが・・・イヌの頭皮を切り裂いて脳を見えるようにしてから、細い金属針で灰白質のさまざまな領域を刺激し、筋肉の収縮をおこさせていた。(p.p.118-119)

[人間でも脳の]随意運動野を刺激すれば脚が急にピクンとのびるかもしれないが、ジョヴァンニ・アルディーニとアンドリュー・ユーアが一世紀も前にやって見せたように、脚に沿って走る神経に電流を流しても同じことが起きる。(p.121)

一九九八年にはノースカロライナ州在住のスチュワート・メロイ医師が・・・電気脳刺激が性欲を刺激するという強力な効果を発見することになる。[慢性的な腰痛を抱える女性の]患者は背骨に電極を埋め込む「仙骨神経刺激療法」と呼ばれる治療を選んでいた。手術中にメロイ医師が電極の位置を試していると、女性が妙なあえぎ声を出しはじめ、「それをどんなふうにやるのか、私の夫に教えてちょうだい」と大声で叫んだという。

昆虫偵察機

[科学者デルガドがコントロールする]ウシの脳には「スティモシーバ」が埋め込まれていた。無線につながった神経のペースメーカーの一種で、デルガドがイェール大学の生理学部にある自分の研究室で設計したものだ。この装置を使って電気脳刺激(EBS)を与えることで、動物を命令に従って踊らせたり鳴かせたりすることができた。

[てんかんの治療を受けていた三六歳の女性の手術後、]療法士が埋め込まれた電極に順番に電流を流しながら話を聞いていた。右側頭葉を刺激したときに、この女性は体の片側でヒリヒリするような快感があると話した。パルスを繰り返すうちに快感はさらに強まって、患者はおしゃべりになり、異性の気を惹くようなそぶりを見せるようになった。あるところまでいくと欲望があまりにも刺激されたせいか、療法士に結婚してほしいと迫った。(p.p.134-135)

もし誰かにスティモシーバを埋め込んだとして、その人物は装置に送られる命令に抵抗できるのだろうか?・・・デルガドの患者のひとりは、手で握りこぶしを作らせようとする刺激を運動皮質に送られ、それに抵抗するよう指示された。何回やってみてもだめだとわかると、患者はため息まじりにこう言った。「先生、先生の電気のほうが、私の意志より強いのだと思います。」

 [だが、命令を直接脳に送るよりも]脳の一部を刺激して感情を呼び起こす[ことで行動を起こさせる]ほうがずっと簡単だ―人はその感情にしたがって行動するだろうし、常にその行動を自発的なものと考える。たとえばデガルドが、ひとりの患者にある種の不安を抱かせるよう何度も仕向け、その患者が自分のまわりを調べるよう誘導してみた。運動皮質に電極を埋め込まれた場合とは異なり、この患者はいつも自分から調べたくなって、自分自身の気持ちに従っただけだと言った。 (p.139)

岡田尊司 『パーソナリティ障害がわかる本』

:「障害」を「個性」に変えるために
Okada, T. (2014). Pāsonariti shōgai ga wakaru hon: Shōgai o kosei ni kaeru tame ni. Tōkyō: Chikuma-shob

①両極端で二分法的な認知
・・・敵か味方かという、中間のない二項対立に陥ってしまうのです。


②自分の視点にとらわれ、自分と周囲の境目があいまい

③心から人を信じたり、人に安心感が持てない
・・・ささいなことでも傷つきやすく、他者を不快なものや自分の邪魔をするものとして捉えがちです。

④高すぎるプライドと劣等感が同居

⑤怒りや破壊的な感情にとらわれて、暴発や行動化を起こしやすい
(p.p.32-41)


自己愛的怒りと嫉妬深さ

 自己愛性パーソナリティ障害の人に見られる一つの特徴は、思い通りにならないと激しい怒りにとらわれることです。その怒りはとても強烈で激しいものです。暴言を吐いたり、物を壊したり、暴力になってしまう場合もあります。


たとえ自分に非があっても、相手の不手際や無能ぶりを一方的に責め立てます。なかには自分を怒らせたことに対して怒るという場合もあります。「なぜ、おれを怒らせるんだ?」「なぜ、私を怒らせるの?」は一つの常套句です。

そして自分を怒らせた相手に制裁を加えようとします。つまり、自分が絶対の基準であり法律なのです。自分を怒らせることは正義に背くことで、絶対の悪とみなしてしまうのです。(p.163)


弱さを見せると危険

 反社会性パーソナリティ障害の強い人は強いものに憧れ、弱いものを軽蔑します。
相手の態度にオロオロしたり、おもねるような態度で接すると、扱いやすい相手だと見なして嘗めてかかってきます。泣き落としにかかったり威嚇したりして、思い通りに操ろうとするようになります。(p.219)

『他人を傷つけても平気な人たち』 杉浦義典

サイコパシーは、あなたのすぐ近くにいる

Sugiura, Y. (2015). Tanin o kizutsuketemo heiki na hitotachi: Saikopashi wa anata no sugu chikaku ni iru. Kawadeshoboshinsha.


 サイコパシー傾向のとくに高い人だけが反応する質問項目を調べた研究がフロリダ大学で行われました。その結果、「私は、自分の行動が道徳的であるかに無関心です」という答えが、もっともサイコパシーらしい答えでした。
 つまり、サイコパシーは、道徳に無関心、言い換えれば罪悪感がないのです。(p.38)



 モラルの欠けたパーソナリティを背景としてパワー・ハラスメントをくり返すことを、モラル・ハラスメントと呼びます。このモラルの欠けたパーソナリティとは、まさしくサイコパシーや自己愛パーソナリティのことのようです。

事例から見る「モラハラ」とサイコパシーの関係

事例1

・・・社員たちの対立を利用するために、社員を中傷するようなうわさは放置したりもします。
自分に従順な社員は優遇し、反抗的なものは冷遇するという不公平さを示しました。部下に対する不公平さは目に余るものになっています。不公平さを訴える社員には威嚇で返し、ささいなミスから解雇しようとしたりします。(p.p.108-109)