Saturday, February 29, 2020

高田昌幸[編]『希望』

Takada, M. (2011). Kibō. Tōkyō: Junpōsha. 

見栄とか意地とかプライドだとか、見えない怪物だよ

茂幸雄(しげ・ゆきお) 六七歳
自殺防止のNPO代表 福井県


自殺したときの遺書なんか読むと、皆さん、「死にたくない」ということなんですね。‥自殺未遂で保護した人の話を聞くと、やっぱり死にたくないのよ。‥助けを求めたいんだけど、助けを求める場所がない。(p.p.75-76)

東尋坊では‥飛び込む場所も三ケ所ってほとんど決まっている。そこに保安員を置いておけばいいんですよ。あの当時、シルバーに働いてもらおうっちゅう、行政のほうで割り当てがあって、それをこっちに持ってきてくれ、と言ったんだけど、地元が反対するからできないんや、って。行政のほうは、地元の顔色ばっかりうかがって、何もしない。そういう風潮があったよね。
…ここの町全体が、自殺の名所を売り物にして観光が成り立っていた。(p.77)


もう一つ言うと、自殺したいと言う人が、どこへ助けを求める場所があるんですか、って。警察は何も権限ないのね。警察官職務執行第三条に「保護」ってあるんやけど。犯罪でないから、警察は保護したら、二四時間以内に保護者か福祉課に渡すことになっているの。市町村が保護を決定して実施しなければならない、という規定があるんだけど。それを、自分とこの財政負担になるんで、県外の者を何でせにゃいかんの、って言うの。‥白昼堂々と(保護の拒否が)行われていて。これもまさしく犯罪なんやって。‥ここで自殺を誘発している。死にたくないのに死なせているのは誰や、って。(p.80)

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