Saturday, October 14, 2017

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』

Ikegaya, Y. (2013). Tanjun na nō fukuzatsu na watashi: Matawa jibun o tsukaimawashinagara shinka shita nō o meguru yottsu no kōgi. Tōkyō: Kōdansha. 



     *****



 人の海馬[Hippocampus]に細い電極を刺して、ニューロンの活動を記録してみてわかったことなんだけど...
 たとえば、君が何か思い出すとしようか。何でもいい。たとえば好きな映画のこととかね。すると、それを思い出して、意識にのぼるよりも前に、その映画に対応する海馬のニューロンが活動を始めているんだ。(Gelbard-Sagiv H. et al. Internally generated reactivation of single neurons in human hippocampus during free recall. Science. 2008)
 ニューロンが活動すると、その1.5秒後に、そのニューロンに対応した内容を思い出すんだよね。つまり海馬の活動を見ていれば、君が何を想起するのか、その内容を、君よりも先に知ることができるってことだ。(p.265)



ありもしない色が見えてくる

…外界にピンク色が存在しているかどうか、あるいは、ピンク色が光波として網膜に届いているかどうかは、あまり重要なことではなくて、脳の中のピンク色担当のニューロンが活動するかどうかが、「存在」のあり方、存在するかどうかを決めていることになります。

目を介さずに、大脳皮質で直接「光」を見る?

 それは大脳皮質に光を感受するチャンネルをつくらせたらどうなるかという実験だ。(Huber D. et al. Sparse optical microstimulation in barrel cortex drives learned behaviour in freely moving mice. Nature. 2008) ニューロンそのものに光アンテナを発現させるんだよ。…その結果、[オペラント条件付けされた通りに]ちゃんとニューロンに光が届いているときだけ、右側に行ってエサを取ることができるようになった。(p.240)

脳を記録すれば心は読める

…みなさんのピンク色ニューロンの活動を記録しておけば、そのニューロンが活動をやめたら、「あ、今、ピンク色は見えてないでしょう」と言い当てることができるわけですよね。こんなふうに脳を覗かれると、すべてはバレバレ、私たちの心が読まれてしまう可能性があります。
 これを応用すると、嘘発見器ができ…私が知る限り最も成功しているのは、このマーク・ジョージらが率いる研究グループでしょうか。(George MS., et al. Detecting deception using functional magnetic resonance imaging. Biol Psychiatry, 2005)

 ちなみに、インドでは世界に先がけて、MRIの嘘発見画像が法廷で証拠として使われています。
(p.p.33-35)


 もうひとつ、おもしろい話をしましょう。(Coan JA., et al. Lending a Hand: social regulation of the neural response to threat. Psychol Sci. 2006)…"Lending a Hand"つまり「手を貸す」というタイトルがついています。…ここではボランティアの既婚女性に研究室に集まってもらって、脳の活動を調べています。
 何をするかというと、手に強い電気刺激を与えるんです。痛いんですよ、ビリビリと。…そこで、次に何をやったかというと…旦那さんに脇でもう一方の手を握ってもらったんですよ。…すると驚くべきことに、恐怖の反応が減るんですよ。島皮質といって嫌悪感を感じる脳部位の活動が、夫が横で手を握っていると減ります。…おもしろいことに、見知らぬ人が手を握った場合は、何の効果もないんです。

脳を覗かれる

…奥さんの信頼度が高いほど、鎮痛効果も高いということです。だから旦那としては「オレたちは円満だろう」と自信満々で手を握ったらまったく[島皮質の]活動が減らなかったなんてこともあるわけです。…裏を返すと、脳さえ見れば、妻が夫のことをどれだけ愛しているかを測定できてしまうということですね。

…僕はこれを「脳ハラスメント」と呼んでいるのですが、言ってみれば、脳の反応はプライベートなものです。個人情報だから本来は知られたくないこともたくさんある。…考えている内容がバレてしまったら、すごく恥ずかしいとか、人間関係の上で都合が悪いとか、いろいろと支障があるでしょう。どうですか。やっぱり人って、素裸を見られるよりも、脳内を覗かれる方が恥ずかしいと、私は思うのですが。
 現代科学ではともすると、そういった心の動きまで手に取るようにわかってしまう可能性すらあるわけです。(Miyawaki Y, et al. Visual image reconstruction from human brain activity using a combination of multiscale local image decoders.,etc)

 だから今、神経科学では、研究における倫理性をしっかり確立していこう、やっていいことと悪いことの基準を確立しようという方針があって、最近では「神経倫理学」という新しい学問も生まれています。(Illes J., et al. Neuroethics: a modern context for ethics in neuroscience. Trends Neurosci, 2006.,etc)
(p.p.37-39)


「心が痛む」ときは、脳でほんとに痛みを感じてる

 これを端的に示す実験がある。…最初は3人で楽しく遊んでいるんだけど、ほかの2人同士でゲームを楽しんでいて、本人だけが「のけ者」になったという状況になる。…そんな状況に置かれたときの脳の反応をMRIで測定してみたわけ。そしたら驚くことに、<[身体に損傷を受けた]痛み>に反応する脳部位と同じ領野が活動したんだ。…つまり、脳から見ると、仲間外れにされたときの不快な感情は、物理的な「痛み」と同質なものだといえる。(p.167)
(Eisenberger NI. et al. Does rejection hurt? An FMRI study of social exclusion. Science. 2003)


僕らの「心」の働きは、進化の過程の「使い回し」の結果

 相手の痛みを理解するという「共感」の心は、やはり[身体が損傷を受けているときの]「痛み」から生まれているんだね。実際、憎しみがあって、「痛い思いをして、ざまをみろ」と感じているときには、共感回路は活動しないの(笑)。
(Singer, T. et al. Empathic neural responses are modulated by the perceived fairness of others. Nature. 2006)
…モノを破壊するときも傷み回路が活動するんだよ。とくにまだ使えるようなもの、テレビとか冷蔵庫とか、あるいはボールペンでもいい、まだ使えるものをハンマーで壊すシーンを見ると、「ああ、もったいないなあ」と思うでしょ。その場合も痛覚系の神経回路が活動する。(p.p.170-172)


自分か他人かを区別できなくなる

 TMS[Transcranial Magnetic Stimulation]という実験装置を使う。…頭皮の表面から強烈な磁場をかけて、脳の一部をマヒさせる刺激装置だ。これを使うと、ある特定の脳領域の活動を一時的に抑制することができる。たとえば言語野をマヒさせれば、その瞬間は言葉が出せなくなる。視覚をマヒさせると視野の一部が欠ける。
 この装置を使って、側頭葉のある部分を刺激してマヒさせると、写真に写っている人物が自分か他人かわからなくなってしまうんだ。
(p.173)


Picture from CRAM

幽体離脱を生じさせる脳部位がある

…脳を直接に電気刺激して活性化させる実験もある。…たとえば、運動野を刺激すると、自分の意志とは関係なく、腕が勝手に上がったり、足を蹴ったりする。視覚野や体性感覚野を刺激すると、色が見えたり、頬に触れられた感じがしたりする。
…頭頂葉と後頭葉の境界にある角回[angular gyrus]という部位。この角回を刺激されるとゾワゾワゾワ~と感じる。(Arzy S., et al. Induction of an illusory shadow person. Nature. 2002)…自分のすぐ後ろに、背後霊のように誰かがベターっとくっついている感じがするようなの。うわーっ、だれかにつけられている。だれかに見られている……強烈な恐怖を感じるんだって。
 でもね、その実態を丁寧に調べてみると、自分が右手を上げると、その人も右手を上げるし、左足を上げてみると、その人も左足を上げる。…そう実は、背後にいる人間は、ほかならぬ自分自身だ。
 要するに、「心」は必ずしも身体と同じ場所にいるわけではないってこと。…この例では、頭頂葉を刺激すると、身体だけが後方にワープする。
 この実験でおもしろいのは、その「ゾワゾワする」という感覚について尋ねてみると、背後の“他者”に襲われそうな危機感を覚えているという点だ。これはちょうど統合失調症の強迫観念に似ているね。
…さらに仰天するような実験がある。(Blanke O., et al. Stimulating illusory own-body perception. Nature. 2002) …[右脳の角回を]刺激された人によれば「自分が2メートルくらい浮かび上がって、天井の下から、自分がベッドに寝ているのが部分的に見える」という。…幽体離脱だね。専門的には「体外離脱」と言う。
…幽体離脱というのはそんな珍しい現象じゃない。人口の3割ぐらいは経験すると言われている。ただし起こっても一生に1回程度。…今や装置を使って脳を刺激すれば、いつでも幽体離脱を起こせるようになってきた。(p.p.173-175)


意図を生みだす中枢

 運動準備野[運動前野と補足運動野]が活動すると、次に運動野が活動して、すると体が動く。…つまり、意志が生まれるよりも先に活動する脳部位とは「運動準備野」のことだね。
 これは脳の刺激実験で検証できる。たとえば、運動野を刺激すると勝手に体が動いてしまうよね。右脳の運動野の腕を支配する領域を刺激すると、左腕が動く。本人の意図とは関係なく、自動的に動いてしまう。(p.261)

2 comments:

n said...

機能的磁気共鳴画像装置

脳の活動をスキャンすることで、その人が考えていることを知ることができると いう研究結果が、11日の米科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」 (電子版)に掲載された。
ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のエレナー・マグワイヤ氏らは、 「機能的磁気共鳴画像装置」(fMRI)を用いて、ひとつひとつの記憶と関連した 脳活動を特定することができ、さらに、それをもとに思考のパターンを特定できる ことをつきとめた。この研究結果は、人が過去の記憶のうちどの記憶を呼び起こして いるかを、脳活動のパターンだけで特定することができることを示唆している。
「脳の海馬において、ぞれぞれの記憶が異なった形で表されていることをつきとめた。 記憶のありかをつきとめたので、今後は、記憶が保管される方法や、記憶の時間経過に よる変化について調べることができるだろう」(マグワイヤ氏)
研究は、被験者10人に対し、3本の短編映画を見せたあとで脳をスキャンした。3本の 映画はよく似たごくふつうの生活の場面を撮影したもので、別の女優が出演していた。
映画を見た後、被験者はそれぞれの映画を思い出すよう促され、その際に脳のスキャンが 行われた。研究者らは、スキャン結果にコンピューターで画像化処理を行い、それぞれの 映画の記憶に対応する脳活動のパターンを識別した。
その結果、脳の画像パターンから被験者が3本の映画のうちのどの映画を想起しているか、 正確に特定できたという。

AFP通信(14日12:33) http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2709178/5492167

n said...

One reason this technology has remained a state secret is the widespread prestige of the psychiatric Diagnostic Statistical Manual IV produced by the U.S. American Psychiatric Association (APA) and printed in 18 languages.  Psychiatrists working for U.S. intelligence agencies no doubt participated in writing and revising this manual.  This psychiatric "bible" covers up the secret development of MC technologies by labeling some of their effects as symptoms of paranoid schizophrenia.

[この技術が未だ機密にされたままである理由の一つは、精神医学用の診断統計マニュアルIV(DSM)が広く信頼されているからである。このマニュアルはアメリカ精神医学協会(APA)によって作成され、18カ国で出版されている。米国の諜報機関のために活動している精神科医達は、間違いなくこのマニュアルの執筆とその修正に関与していた。マインドコントロール技術によって生じた影響を、妄想型の統合失調症の症例としてレッテル貼りすることで、この精神医学の「バイブル」は、秘密裏に開発されているマインドコントロール技術の隠蔽を行なっている。]

Finland首席医務官Rauni-Kilde医学博士