刑事は殺人犯や強盗、泥棒を追いかけ、
日本の治安を守っている・・・・それなのに
公安はロクに事件もないのに態度だけはデカイ
・・・「公安は優秀だし、エリートでしょう」と
(捜査で訪ねてきた刑事にむかって著者が)言うと、
「どこが優秀なもんですか」と刑事は憤る。
「出世が早いのは事実ですよ。でもそれは仕事が楽だし、
暇だからです。だから試験勉強する時間がある。
それだけですよ。」
・・・なるほど一理ある。・・・公安は暇だ。
「日本は俺たちが守っている」と大言壮語しても、
もう左右の過激派もいないから公安事件も少ない。
・・・そして昼間から喫茶店や図書館で勉強している。
(p.p.56-57)
<ヒマな公安が考え出した“潜在右翼”とは?>
(右翼の)街宣を聞いたり、庭で木刀の素振りを
したり、神社で祈ったりすることが「活動」と思われ、
潜在右翼のレッテルを貼られる。
・・・高校の剣道部の人だって、学校で練習する分には
いいが、公園や家の庭で練習したらダメだ。
潜在右翼かもしれないと内偵されてしまう。
(他著引用)・・・このようにリストアップした者を
月に何度と決め、対象者が死ぬまで一生監視する。
・・・対象者がどこへ引越しても、その地元の所轄警察署に
引き継がれ、消されることはない。
公安にしてみれば、潜在右翼を一人発見すれば
警備部長賞がもらえ、実績はぐっと上がる。
(『オマワリさんの華麗なセカイ』山下寛)
(p.p. 106-109)
あるとき、あまりに頭に来たので、こっちから
尾行しているやつに声をかけた。「何で尾行してるんだ。
名を名乗れ」と。尾行していた公安は、思わぬ逆襲に
たじろいだ。「いや、何も尾行なんかしてませんよ。
私は一般のサラリーマンです。たまたま行く方向が同じ
なだけです」と、しどろもどろに言う。
「一般のサラリーマンだというなら身分証を見せろ」
と服のポケットに手をかけた。
その瞬間、彼は脱兎の如く逃げ出した。・・こうなると
こっちもいたぶってみたくなる。そして「ドロボーだ。
捕まえてくれ!」と大声で叫んだ。向こうは全速力で逃げる。
こっちも全速力で追いかける。警察官を追いかけるなんて
痛快だ・・・彼は何を思ったか交番に飛び込んだ。
・・「ドロボーだ。逮捕してくれ」と交番のお巡りさんに
交渉したがダメだった。公安だと知って匿ったのだろう。
こっちは暴力的に追い返されてしまった。
(p.p.183-184)
公安第三課は・・おおっぴらだ。名刺も渡すし、一緒に
飯を食い、酒も飲む。・・(たとえ尾行や張り込みでも)
顔を隠さない。堂々としている。これは立派だ。
・・名前を明らかにして仕事をしている。・・だが、
第三課だけが例外なのだ。他の公安は素顔をさらすことはない。
(p.195)
(公安は)やりたい放題なのだ。・・・交通違反などで
右翼を捕まえても自分たちの得点にはならない。捕まえるなら、
もっと大きなことで捕まえたいのだ。
その証拠に、スピード違反だって駐車違反だって公安は
チャラにしてくれる。捕まったときに・・切符を切られても、
この後に公安に電話をすると、「分かりました」といって
チャラにしてくれる。公安の意識のなかでは彼らこそが
国家なのだろう。
(p.34)
(“民主主義”のはずの今日の日本で)たかが集会
(しかも警察の許可を得たもの)に出たくらいで公安に
一人一人顔写真を撮られるなどの思いをする。まるで
戦前のようだ。特高に狙われ、追われる共産党員のようだ。
公安は人間も金も余っていて、使い道がないから
こんなことをしているのだ。
一方において凶悪犯罪は増える一方だという。
・・・昔はいかにも犯罪者らしい人が犯罪をした。
今は、普通の大学生、高校生が簡単に人を殺す。
(p.187)
公安の使命は「過激派を監視し、何かあったら
逮捕する(こと)」・・しかし、過激派が全滅して
しまったらみずからの存在理由も失うことになり、
元も子もない。・・・だから過激派に対しては
「生かさぬよう、殺さぬよう」に取り締まっている
のではないだろうか。
(p.150)
公安がゴミ漁りしているという話は有名だ。
・・・(著者が)ゴミを出すと、ゴミ回収者が来る前にぼくの
ゴミだけ消えている。・・・共産党はそんなこと毎日やられている
・・・だったら、ゴミにだって細心の注意を払っているはずだ。
・・・(ある活動家逮捕の)きっかけはゴミだとしても、
公にできないやり方で(プライバシーが)分かったのでは
ないだろうか。
(p.127)
「公安こそが治安悪化の元凶」
(浅間山荘の内ゲバのようにメンバー内に)疑惑の
種をまき、不信感を助長することこそが公安にしてみれば
成功なのだ。なぜなら疑惑はさらに疑惑を呼び、
疑心暗鬼になり、殺し合いを拡大させたからだ。
「(あいつは)公安(のスパイ)だからこそ我々の動きが
全てわかるのだ」「そういえば、A氏は逮捕されて
すぐに出獄した。スパイになったから釈放された
のではないか」という具合に・・・。
公安がいるために日本の治安が守られている
のではない。逆に、公安が事件を起こし、治安を
撹乱させているのだ。・・・実際に党派間の争いを煽り、
内ゲバを引き起こすこともある。活動家をおだてて
事件を起こさせることもある。「公安は恐ろしい」
という幻影を与え、それに脅えて内ゲバをしたり、
暴走させることもある。それも公安の戦略なのだ。
(p.p.25-26)
(他著引用)「日常的にもガサ入れにつぐガサ入れを
受けるという生活だった。そうすると自分のなかにも
憎悪の感情が出てくる。・・・絶対勝ってやるんだ
という気持ちになって・・勝つための手段として、
だんだん目的と手段が転倒していき、本来とは
違うはずのあり方に自分がなってしまう」
『テロと報復とコミュニズム』荒 岱介
1970年の「よど号」ハイジャックのときも、
実行犯の一人が「公安にあまりに弾圧されるので、
「一泡吹かせたい」と思い、それが大きな動機になった」
と言っていた。本末転倒だろうが、公安への<恨み>が
引き金となって起きた事件は多いのだ。
実はほとんど全部がそうかもしれない。
(P.168)
ガサ入れの時・・・金属探知機をわざわざ持ってきて
(あるわけないと知っていて)「チャカ(拳銃)はないか」
「覚せい剤はないか」と大声で言い合っている。
隣近所に聞こえるように大声で言う。また、わざと
外に出て大声で警察官と話す。大家さんや近所の人は、
「どんな凶悪犯か」と思って見にくる。
妻帯者はもっと大変だ。(関係ないとわかっていても)
奥さんの服や下着まで全部取り出して調べる。
(P.178)
(裁判官は女には甘い判決になるというが)裁判官になる
ような人は子供のときから・・遊ぶ暇もなく勉強する
・・・だから女性に対してだけは性善説であり、年齢を
とってから不祥事(犯罪)を起こしたり、金や女の誘惑に
簡単に負けたりするのだろう。そして、警察の言い分を
真に受けて、ガサ入れ令状を乱発する・・・だから
・・裁判官には少し、「実習」をやらせたらいい。
弱い者、被害者の「痛み」を知ってもらうのだ。
・・実習としてガサを数回体験させる
・・・そうしたら、「こんなに大変なことか」と分かり、
令状を出すのも慎重になるだろう。
(p.180)
公安のやり方は・・合法的に運動している人間を
徹底的に弾圧して、監視している。・・・一方、市民生活に
潜んでいる、過激な人間に対してどうかといえば、
何の手も打てない。無力だ。
(p.200)
「いくらなんでもスパイを使ったり、こんな汚いやり方は嫌だ」と内心思っている公安はいるはずだ。
(しかし自省できたのは元公安の島袋修氏ひとりで
内部告発率はたった0.01%にすぎない。)
優秀な人材をいつまでも、ただの抑圧・弾圧・謀略
機関の一員として終わらせるのも惜しいと思う。
(p.201)