Tuesday, November 24, 2015

『考えない練習』 小池龍之介

Koike, R. (2012). Kangaenai renshū. Tōkyō: Shōgakukan.

 池谷: たとえば2008年に、イタリアのある地方で米軍基地を拡大するという話があったんですが、当然、その時に反対意見や賛成意見がたくさん出たので住民投票をすることになったんですね。その時、心理学者が現地で実際に調べたら面白いことがわかった。
  住民投票の一週間前に、「あなたは基地拡大に賛成ですか、反対ですか」というアンケートをとりました。すると一週間前だから、まだ決めていないとか、わからないという人がいた。でも、その人たちを調べてみると、一週間後に反対票を入れるか賛成票を入れるかが、その時点でもう高い確率でわかってしまうんですよ。
 なぜわかるのか。いろいろ方法がありますが、最もわかりやすいのは自由連想の方法です。
 たとえば「水と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?」と聞く。
 
・・・しかし自由連想というのが、これまた不思議なもので、たとえば水と聞いて「聖徳太子」と言う人はあまりいないと思うんですよね(笑)。「自由」なはずだから水から聖徳太子に飛んでも良いはずなのに、実のところ全然自由ではなくて、飛躍できる着地点が決まってしまっているんです。
 
・・・それで、ある単語を聞いたらどう反射するかを調べていくと、その人の「思考癖」がわかってきます。実は、これが答えなんです。

・・・だから、一週間前のその人の反射のパターンを調べていくと、一週間後のその人の投票がわかる。「ほら、あなたは賛成にまわったでしょう」というのが、わかってしまうわけですね。
 面白いのは、投票した後に投票所の外でもう一回「あなたはなぜ賛成したのですか?」とアンケートをとるんです。すると、皆もっともらしいことを言うんですね。こういう理由だから賛成であると。でも、誰一人として「ただの反射です」と思っている人はいないんです。本当は反射なのに(笑)。
 ここで重要なことが、その反射パターンが何で決まってくるかというと、その人がどういう人生経験を積んできたか、どういう「来歴」かなんです。(p.p.238-240)

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