Sunday, January 22, 2017

玄秀盛, 中下大樹『何があっても生きる』

Gen, H., & Nakashita, D. (2013). Nani ga attemo ikiru: Koritsu hinkon jishi no rensa o tatsu. Koseishuppansha.

中下 ― 例えば同じ町でも、道路一本を挟んでこちら側は東電からお金が出ているけれども、向こう側は出ていないとか。放射線量が場所によってどれだけ高いとか。警戒区域とされる“半径”の中なのか外なのか。そんな不合理な線引きの結果、同じ町の中でも分断が起こるわけです。
水俣訴訟の時でもそうだったと思うのですが、同じ町民同士が対立を起こしたり憎しみを抱いてしまうのは、お金が絡んでいるからです。「うちは賠償ゼロなのに、なんであの家は〇〇万円も出るのか」ということで対立が始まる。でもよく考えたら同じ町に住んでいて、同じような被害を受けているわけです。本来ならば団結して、東電や国に対して賠償を訴えなければいけないのに、目の前の町民同士でいがみあってしまう。それは国とか東電からすると「してやったり」の状況なんですよ
― 一つになれたらこんなに強いことないけどなぁ。それこそ、東電や国の「してやったり」というのもわかるよな。

(p.p.22-23)


2 comments:

n said...

分割統治
分割統治(ぶんかつとうち、英語:Divide and conquer、ラテン語:Divide et impera)とは、ある者が統治を行うにあたり、被支配者を分割することで統治を容易にする手法。被支配者同士を争わせ、統治者に矛先が向かうのを避けることができる。分断統治とも。

Divide and rule
Divide and rule (or divide and conquer, from Latin dīvide et īmpera) in politics and sociology is gaining and maintaining power by breaking up larger concentrations of power into pieces that individually have less power than the one implementing the strategy. The concept refers to a strategy that breaks up existing power structures, and especially prevents smaller power groups from linking up, causing rivalries and fomenting discord among the people.[Wikipedia]

n said...

「アメとムチを巧みに使い分け、家族の絆を断絶すれば、家族同士は相互に憎しみ合い、自然と瓦解していくものや」

「一つの家族や集団の中で、一人を集中的に可愛がり、他の一人を徹底的に迫害すると、彼らの中で自然と誰につけばいいかとか、どうすれば自分は助かるか といった感情が働き始め、放っておいても協力者や密告者が出てきて、組織の運営がスムースになる。ただ、取り込む人間から信頼、心酔されるだけでは駄目で、時々は彼らにも恐怖心を与え、隷属することでしか生き延びられないという呪縛を持たせなければならない」

「連日、家族会議を開かせ、何事も会議で決めさせる形を取ることが有効だ。 特に家族間で優劣を付け序列を作り、最下位の者を集中して虐待する。 序列は何かにつけて頻繁に入れ替えると、家族全員が常に緊張感に支配される。誰か他の者を最下位に落とさなければ、自分の身が危うくなるので、自分は権力者(美代子)に絶対服従の姿勢を貫き、下位の者は少しでも序列を上げるため権力者の歓心を買おうと媚びへつらい、家族を裏切ることも平気になる。そうなると家族は敵対関係に陥り、もはや結束して権力者に対抗する気力も知恵もなくなる」

家族の分断を図るため美代子がMから学んだ手法の一つに、徹底した差別化がある。・・・家族の中から一人だけ標的を定め、暴行や虐待など徹底的に攻撃する。他の家族はむしろ優遇し、少しでも抵抗したり虐待に手加減を加えれば、その人間を新たな標的とする仕組みだ。これを実行に移すと、家族同士が互いに牽制し合い、誰もが美代子の顔色を窺い、何とか気に入られようと積極的に協力したり密告したりするようになる、というわけだ。(p.224)

一橋文哉  『モンスター : 尼崎連続殺人事件の真実』