Gotō, T. (2011). Habakarinagara. Tōkyō: Takarajimasha.
堅気を食い物にする“半ヤクザ”たち
誰にとっても住みにくい社会
堅気を食い物にする“半ヤクザ”たち
そもそもやくざの世界じゃ、他人の見ていない所で、 人様の物を盗むとか、人の女房を寝取るとか、 コソコソするのが最も嫌われるんだ。・・・そういう奴はどんどん 破門していくしかないわ。・・・するとこういうヤクザ崩れみたい な奴がどんどん増えていくしかないわ。・・・盃も受けてない連中 、堅気の前ではヤクザのふりして、 ヤクザの前では堅気のふりする半ヤクザみたいな輩が堅気を喰いモ ノにしてるんだ。俺が3,40代のころなら、 こんな奴らとっ捕まえて、くしゃくしゃにして、 プロと素人との違いを教えてやったけど、こういうハンパものは決 まってサツにチンコロ(密告)するから、今のご時世そんなことも できないんだ。
怪我でもさせたら、 すぐに組織のトップの責任まで問われちゃうから・・・半ヤクザみ たいな、組織の掟も守れない、 コントロールも利かないタチの悪い連中を増やしてるんだから。 皮肉なもんだ。
怪我でもさせたら、
それと、これだけは言っておきたいんだが最近よくいる「 人を殺してみたかった」とか言って、罪のない人を殺(あや) めるような輩はヤクザの中に一人もおりゃせんでな。土浦や秋葉原 の(通り魔)事件みたいに、「殺すのは誰でもよかった」 とか言って、無差別に通行人を刺し殺すような人間もいない。
もっと言えば、オウムの(坂本弁護士一家殺害)事件や、 世田谷の(一家4人殺害) 事件みたいに小さな子供の命まで奪うような、島根の( 女子大生殺害)事件みたいに山奥で若い娘さらって、 散々暴行して、挙句の果てに、 首だのおっぱいだの切り取るような、犬畜生にも劣る輩も、 ヤクザの中にはひとりたりともいないもんでな。(p.p. 298-300)
誰にとっても住みにくい社会
警察は「市民の安全を守るために暴力団を排除しましょう」 と言ってるが、若い娘や小さな子供がさらわれたり、 一家が皆殺しにされてもいまだに犯人が捕まってないような社会が 、 繁華街に出かけりゃ、いつ頭のおかしい通り魔に襲われるかも 分からないようなこの社会のどこが、「安全な社会」なんだ?
実際、ここ最近は、そんな気味の悪い、 悲惨な事件のニュースばかりだろ? あの女子供がさらわれたり殺されたりする事件のひとつにでも、 ヤクザが関わっていたことがあるのか?
世間では「ヤクザ=人間のクズ」 みたいな言い方をする人もいるが、じゃあ、逆に「 堅気の方々はそんなにご立派なんですか?」と聞きたいよ。親が子 供を殺したり、子供が親を殺したり、 弱い者を寄ってたかって苛めたり、と。 人としての最低限のルールも守れないような人間が増えた堅気の世 界が、そんなにご立派なんですか? ってな。 電車やバスの中で、年寄りが立ってるのに、 優先座席に座って、他人様の前で平気でメシ食ったり、 化粧したりっていう恥知らずの者が増えた堅気の社会が、 そんなにご立派なんですか? という話だ。 少なくとも俺は、 日本人として最低限わきまえるべき「恥」は知ってるよ。 そもそもこんなこと、ヤクザやってた俺に言われるなよって話だな (笑)。(p.p.301-302)
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