Tuesday, December 22, 2015

『家族喰い ― 尼崎連続変死事件の真相』 小野一光

Ono, K. (2013). Kazokugui: Amagasaki renzoku henshi jiken no shinsō. Tōkyō: Ōtashuppan.


[尼崎連続変死事件被害者のひとり茉莉子さんが監禁・拷問から一時逃れたとき、同じ飲食店で働いていた友人の証言]

「・・・出会った当初、髪の毛の長さがバラバラのショートカットで、聞くと、『自分で切った』と言うんです。それに細くてガリガリで、肩とか背中に根性焼きの痕がありました。・・・それから化粧もしてなかった。私が部屋に遊びにいったら、寒いのに新聞紙一枚で暖を取っていたから、『死んでしまうで』って、次の日に毛布を買ってあげたんです。驚くほどものがなにもなくて・・・。」(p.201)
 
茉莉子さんの性格について質問すると、「真面目でほかの人に親切で、めっちゃええ子やった」と斎藤さんは語る。

「最初に私が毛布を買ってあげたら、私の誕生日にカードに絵を描いてプレゼントしてくれたんです。ほかの人にも親切で、病気したときに保険証を借りたことのある相手がおカネに困っているときには、快く貸していましたし、仲良くしていた子の駐車違反を被ったこともあります」(p.204)

[しかしに再び監禁、拷問された]後日、茉莉子さんは[連続殺人鬼美代子一派の]マサら数人と荷物を取りに来たが、当初は以前とは打って変わった態度を見せたという。

「彼女は人が変わったみたいに淡々としてました。それに一切目を合わせようとしないんです。マサが常に見張っていたんですけど、隙を見て私は彼女に『知り合いに頼んで助けることができる。もしあなたが助けてとひとこと言ってくれたら、その人に頼んでなにがあっても助け出す。お願いやから、うんと言って』といいました。すると、それまで淡々としていた茉莉子さんの目に涙が浮かびました。けどぐっとこらえて目をそらしました。それで・・・私は彼女を助けることができなかったんです。それがいまだに後悔として私のなかに残っています。

 帰り際、茉莉子さんは誰にも見つからないように、私にエルメスのクリッパーという時計を手渡しました。そして小声で『高価なものを持ってたら取られるから。これ、持ってて』と囁きました」

 そのときに一瞬見せた表情は、斎藤さんが知る「めっちゃええ子」の茉莉子さんだった。彼女は最後に素顔を見せて、斎藤さんの前から姿を消した。それが今生の別れとなった。(p.208)

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