西田公昭監修. (2023). マインド・コントロールの仕組み. カンゼン.
一般的に人が意思決定を下す際には、トップダウン情報とボトムアップ情報のふたつの情報処理を行っています。…マインド・コントロールが操作するのは、まさにこの情報部分で、意図的に都合のいい情報のみを与えることで相手の思考を操作し、自発的にこちらが望む通りの決定を引き出せます。(p.10)
マインド・コントロールの大きな特徴は、相手に悟られることなく、その思考や行動を操ることができる点にあります。したがって、マインド・コントロールの支配下に置かれた本人には、自分の心が操作されているという自覚がありません。…一度その支配下に置かれると抜け出すことは容易ではありません。
(p.8)
完全に支配下に置かれた場合、財産を騙し取られるといった被害者になるだけでなく、支配者に命じられるまま犯罪行為に及んでしまうことすらあります。…殺人やテロは言うまでもなく「悪」と呼べる行為です。しかし、[オウム真理教]信者たちは、マインド・コントロールによって、それが「正しいこと」だと信じ込まされた結果、通常であれば絶対に行わないであろう凶悪な犯罪に手を染めることになりました。
(p.9)
オウム真理教のマインド・コントロールの手口
信者は、リーダーである麻原を絶対的に崇拝します。その麻原が、犯罪行為を正当化するような教えを説いたのです。たとえば、法律上は殺人となるような罪を犯したとしても、それは今の社会が目覚めていないからで、真に覚醒したレベルから見れば、その人は救済されたのだというような具合です。(p.144)
マインドコントロールと殺人・遺棄致死事件
「信頼関係を築いて相手の弱みを握る」
「人間関係を破壊し孤立させる」
「共犯関係の構築による罪の意識の植えつけ」
「情報操作によって恐怖心をあおる」
(p.117)
尼崎連続殺人・傷害事件
美代子が家族を支配するために用いたのが、相手の弱みにつけ込んで、分断させる手法です。当時高校生だった少女は、かねてから「母や姉は私のことを見下しているのではないかという劣等感を持っていました。美代子はそうした少女のコンプレックスにつけ込み、自分は少女の味方であると思わせる一方で、暴力で母親を追いつめ、少女の前で「いらない子だった」と言わせるなどして、少女と母親の絆を完全に断ち切ります。
これ以降、少女は家族よりも美代子のほうを慕うようになり、母親や姉に対しても虐待を行うようになるなど、完全にマインド・コントロールされた状態になります(少女の母親と姉は激しい暴行や虐待によって、のちに死亡)。
(p.115)
たとえば、ある人が多額の献金をしたとして、それが本当に「本人の自由意志とみなせるもの」なのか、それとも「マインド・コントロールされた結果なのか」を客観的に判断することは、なかなか難しいわけです。…一方で相手を支配してやろうとするマインド・コントロールの”行為”については、比較的わかりやすい。ですから、そこについての規制はかけられるのではないかと思っています。…これは個人の合理的な意思決定を妨害する行為、つまりその人の尊厳や基本的な人権を侵害する行為ではないのかという議論に持っていけるとは考えていて、そうした法的規制を議論していくことが、将来的な被害を減らすという意味でも今後取り組むべき課題であると思っています。(p.46)
マインド・コントロールから身を守る10の方法
(1)つねに誠実でなくてもよい。
(2)相手の誘いを断ってもいい。
(3)答えをすぐに出さなくてもいい。
(4)知らないことを恥じなくていい。
(5)難しい問題には正解はないと心得る。
(6)すぐに親しくなろうとする相手に注意する。
(7)おかしいと感じたら全力でその場から逃げ出す。
(8)他人に依存しないで自分で考える。
(9)従うことに慣れてはいけない。
(10)できる限り情報を集める。
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