Thursday, June 8, 2023

青山透子『日航123便墜落事件 JAL裁判』

 青山透子. Jal裁判 : 日航123便墜落事件. Tōkyō: 河出書房新社; 2022.

一九八五年八月一二日に墜落した日航123便のボイスレコーダーとフライトレコーダーは、八月一四日に墜落現場の群馬県上野村御巣鷹の尾根山腹斜面下五〇〇メートルの沢で発見された。そしてその日の深夜、午前零時半に設置された運輸省(当時)事故調査委員会事務局で保管された。当日の記者会見において、再生装置や特殊電源が必要であるため、解析開始は一六日以降になると発表された。ところが未解析であるにもかかわらず、『毎日新聞』(一六日付)が後部圧力隔壁破壊説という飛ばし記事を出した。その直後にボーイング社はそれを否定し、日本航空も社内で独自にコンピュータによる解析を行った。その結果を受けて一九日に河野宏明整備部長が科学的根拠に基づき、「何らかの外力で垂直尾翼が折れ、それに伴い隔壁が傷ついた可能性」を記者会見で発表した。この時すでに、後に発表された事故調査報告書の付録研究資料に書かれている「異常外力の着力点」の存在を日本航空が示唆していたことになる。


 ところが、日本航空が外的要因の可能性を発表した翌日、運輸省の大島航空局技術部長が、圧力隔壁に重大な絡みがあると、何の根拠もないまま発言している。まだボイスレコーダーやフライトレコーダーが解析途中であり、この発言には政府側がもっていきたい方向性が表れている。しかしこれも次の日、現場で実際に出向いて調査を行っている事故調査委員の「隔壁に大きな穴はなかった」という発言で否定されている。いずれも各社新聞報道に明確に書かれている。(p.p.76-77)


現物のボイスレコーダーに基づいて作成されたはずの事故調査報告書では、聴き取り不能という理由で意味不明の箇所が随所にあり、果たして聴き取りにくいほどの雑音が入っているのか、または航空自衛隊が分析と称して、後から加えた雑音なのではないだろうか、という疑念が存在する。なぜならばいくら損傷が激しいといっても、その心臓部にある録音テープは、耐熱や耐衝撃構造のカプセルに収納されており、1100度の温度で三〇分間、1000Gの衝撃に0.011秒耐え、海水、ジェット燃料の中に48時間おかれたとしても浸らないのである。従って、過去様々な航空機事故のボイスレコーダーは、日航123便よりも苛酷な状況下にあったものも多数あったが、それでも突然会話の途中に雑音が入ることはなく、日航123便のボイスレコーダーだけが雑音が多いというのはそもそも不自然である。操縦士たちの会話の背景音も一定のままずっと継続した音が録音されているのが通常だ。

 ...特に、当該飛行機を操縦していた自衛隊出身の高浜機長の会話に、全体の流れから考えても不明な部分が多く見られる。不都合な部分を雑音で聴き取れないよう意図的に作成したものを公表して、世間に知られたくない会話を隠していると言われても仕方がない。


日航123便墜落事件以降は、[日本航空幹部候補生の新入社員教育として]この自衛隊への入隊研修が突然行われなくなった、という。...驚くべきことに毎年続いてきたこの訓練がなくなったきっかけが、日航123便であるというのだ。

 その時の新入社員の教育担当者から出た言葉は、きくところによれば「日航123便墜落は自衛隊がやったのである。だから今後、自衛隊体験教育は行わない」という衝撃の事実であったそうだ。

(p.80)


結局のところボーイング社の売り上げは、1985年に過去最高となって、最高益を上げた、...『日本経済新聞』には、大量の死者が出ても最高益、という皮肉な見出しの記事が掲載された。一方、日本航空は、一時的に株価が暴落したが、政府が所有する株式放出と民営化の思惑によって、こちらも株価が1985年度末に最高値となっている。(p.84)

それにしても、どこに修理ミスを犯した会社の軍用機や民間機を大量に購入する国があるだろうか。しかも、日本政府は、ANAにまでボーイング社を購入するように働きかけた。

(p.83)