Thursday, June 9, 2016

Camellion 『洗脳の科学』

Camellion, R., & Kanechika, O. (1994). Sennō no kagaku.

 読者の幼い子どもにとって、現在最も危険な男は合衆国ナンバー・ワンの行動学者、B・F・スキナーだ。・・・スキナー型の行動主義が、心理学の世界では最大の動きになっている。「操作」というものを善しとするこの新しい改革運動の叫びは・・人々を統制に服従させ・・仕事や教育や家庭やその他生活のありとあらゆる場面に、あたかも癌のように絡みついていこうとするやり方なのだ。
 彼は、虫を見るような見方で人間を見ている。・・自らを主張することのできる認識主体というものまで、すべて否定するのである。・・私たちを管理すべき動物としてしか見ていないということが言える。
・・男にも、女にも、子どもにも生きていく意味や目的や意義がなくてはならないのだ。もしそれがなくなったら人は破滅するしかないのである。・・人を単なる生命のレベルに引きずり下ろそうというのだから、その意味ではB・F・スキナー教授は「精神の抹殺者」である。彼の哲学すべてが「コントロール」ということに連動している。(p.p.32-35)

 行動主義のテクニックが本当に危険なのは、コントロールが利かない点にある。今日の煙は明日の大火となる可能性がある。そういったテクニックは、大衆すなわち消費者の手には入らない。もっともはっきりしているのは、金持ちや権力者・・に対しては、そういったテクニックが使われることはないということである。(p.119)

 人の行動をコントロールするのに電子工学を用いるということは、行動修正という無謀な世界ではそれほどとっぴなことではない。・・体に埋め込んだり取り付けたりしたセンサーから送られてくる情報を遠隔測定するシステムが発達すれば、肉体的接触がなくても・・絶えず被験者を監視し続け、電子的・物理的に干渉して特定の行動に影響を与えたりコントロールしたりできるようになる。もちろん「電子的に干渉して」とは、苦痛を与えて、という意味だ。(p.p.182-183)


 大脳側頭葉にある扁桃体[Amygdalaは]攻撃性や暴力行為を司っているところだ。・・[ところが]視床下部の中かその近辺に、快楽と苦痛の中心―あるいは「回路」―となっている部分が存在する・・・この発見によって行動修正の可能性は無限のものとなったのである。・・・精神的抹殺を目指す支配者の観点から、「理想的な」装置といえば、恐怖、苦痛、不安、そして快楽を引き起こす体内ラジオゾンデであろう。これこそ独裁者が持ちうる究極の「賞罰効果コントロール装置」と言えるかもしれない。(p.191-192)

 picture borrowed from: neilslade.com/gifs/amygdala1.jpg
電子心理学の分野で今[編者註:この書籍の原著が出版された1978年]現在行われている研究は、脳への電気的刺激によって人間の情緒・意識・記憶・行動などを外部からコントロールするという・・・現在の研究は「電気的な力で人の情緒や意識や行動を支配することができる、すなわち押しボタンによってロボットのように人をコントロールできる」(デルガド教授の言葉)という不快な結論を証拠立てている。(p.194)

HEWが資金供与したアラバマ州タスキージーでの梅毒の]実験では、梅毒患者に病気が完治したと信じ込ませておいて、実際には二〇年間も治療しないままにしておいたのだ。もっとも進行した段階の病状を調査するためにである!こういったことは不道徳なだけでなく犯罪的でもある!しかしこれに対しては何の追求もされなかった……。[編者註:主な犠牲者が黒人だったためといわれている](p.162) 

[ほかにも1978年までに]過去一〇年間マスコミは、倫理的諸問題を惹起する多くの実験を公表し議論してきた。若干の例をあげるなら、ブルックリンのユダヤ慢性病病院で行われた高齢者への癌細胞注射、ウィロウブルックでの知恵遅れ児童への肝炎ウイルスの計画的感染・・などである。(p.163)

1 comment:

n said...

トラッキング

アメリカでは刑務所の数が、そこに入るべき人間に比べて圧倒的に少ない。そこで彼らを“自宅に収容”しコンピューターで監視するという発想が生まれた。ゴスが作ったブレスレットは、まさにこれにうってつけだったのだ。
 九〇年代に入ってからは、この電子モニターシステムの監視下にある人物は全米で一万人を超え、しかも同様のシステムはヨーロッパにも普及している。

ID認識

 固体情報を盛り込んだチップを、体外か体内に装着する・・・チップに入るのは・・名前や銀行口座番号、経歴、指紋など、いろいろなものが考えられる。・・このID認識と、バイオテレメトリ、トラッキングの機能を持つ装置が、知らぬ間に何者かの手のによってインプラントされたらどうなるだろう。常に監視され、弱みにつけ込まれ、利用されてしまう。その恐怖はマインドコントロールに勝るとも劣らないだろう。

高橋紳吾 『図解 洗脳撃退マニュアル』