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Sunday, October 25, 2026

池谷修二・監修 『脳と心のしくみ』

 池谷裕二 監修., Ikegaya Yūji kanshū., & Ikegaya, Y. (2016). 脳と心のしくみ : 最新科学が解き明かす! = Mechanism of brain and mind (Bijuaruban). Shinsei Shuppansha.


心を読むマインドリーディング

脳内の信号を解読することで心の状態を読み解く「マインドリーディング」の研究である。…機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などを使い、脳内の電気信号を解析することで、その人が何の文字や図形を見ているかを脳の外から知ることにはある程度成功している。
…見ている画像と、脳の活動の間の法則性(パターン認識アルゴリズム)を見つける。このアルゴリズムを使えば、脳内の活動を調べるだけで、どんな画像を見たのかがわかるのだ。
今後アルゴリズムの精度が増せば、さらに複雑な画像にも対応できるだろう。また、同様の手法を聴覚野など、ほかの機能を持つ脳の部位に応用することで、さらなる広がりが期待できる。
この技術が進むと、脳の外から心がのぞけることになる。それは困るという人がほとんどだろうが、救われる人もいる。
カナダでは、自動車事故で脳に大きなダメージを負って12年間、重度の昏睡状態だった男性の脳の活動をfMRIで測定しながらコミュニケーションをとる実験が行われた。男性は、…質問に対して脳の活動状態が変化し、意思を持ってやりとりできることがわかった。(p.p.184-185)

脳研究の最新技術で夢をのぞく

まず、脳波計を装着した実験参加者にfMRI装置内で実際に睡眠をとってもらい、睡眠中の脳の活動状態を計測する。そして…夢の内容と、その夢を見た時に活動していた脳内の領域に関するデータを大量に蓄積する。・・・準備が整ったところで、改めて実験参加者にfMRI装置に入ってもらい、睡眠中の脳の活動データを、準備したアルゴリズムを使って解析しながら、実験参加者から夢の内容を聞き、夢に登場したものを当てることに成功した。(p.p.186-187)

ブレイン・マシン・インターフェース
脳の信号をキャッチして解析する技術の開発など、脳研究の進歩を日常の生活に生かす研究も進んでいる。その一つがブレイン・マシン・インターフェース(BMI)だ。
BMIは、脳の活動信号を計測し、その信号を解析することで、外部の機械やコンピュータなどを直接制御する技術をいう。
手足が動かないなど、運動機能に障害を持つ患者の脳から出た運動指令や運動の意図などを読み取り、義手や車いすなどを操作する試みはすでに世界各地で行われている。言わば、念じるだけで、さまざまな機械を動かせる技術だ。
…BMIの方法は侵襲型と非侵襲型の2種類に分けられる。
侵襲型は、脳に直接電極を埋め込む方法で、神経細胞から直接電気信号を取り出せるので信号の制度は高い。しかし、手術が必要なため体への負担が大きい。また、狭い範囲の信号しか取り出せないという欠点もある。
非侵襲型は、頭の表面にセンサーを着け、外から活動情報を得る方法だ。この方法は、体に負担をかけず、手軽に脳全体の情報を得ることができる。ただし、頭蓋骨を隔てて情報を得るために、侵襲型より精度が低くなる。(p.p.188-189)

脳をネットワークでつなぐ

近年行われたある実験では、サルの脳に電極を埋め込み、仮想アーム(コンピューターのバーチャルリアリティとして構成された物体を触ったり動かしたりできる仮想の腕)を操作させ、触覚などを惹起させたり、物体を動かしたりすることに成功している。(p.196)
インターネットを介し、遠く離れたラットの脳と脳を直接つなぐ実験も行われている。…ブラジルのネズミにレバーを押すと飲み水が出ることを学習させる。この操作をしている信号を、脳に埋め込んだ電極から取り出し、インターネットを通じ北米のネズミに送る。すると自らは学習していない北米のネズミも同様に、レバーを押して水を飲んだというものだ。(p.197)

進化する脳研究を追いかける倫理

BMIを使えば、人間の脳にある情報を読み取ったり、外からインプットしたりすることもできる。これは、使い方によっては戦争やテロ、犯罪などに利用されるおそれがあることを意味する。
ほかにも、現在の脳研究には、脳のイメージング画像から政治的な思考を調べるニューロポリティクスや、経済的な行動を予測するニューロエコノミクスといった分野もある。さらに、近い将来、知能を薬物で増強する技術が開発されるかもしれない…。
…そこで生まれたのが、ニューロエシックスという新たな学問だ。日本語にすると、脳神経倫理学または神経倫理学となる。脳研究にかかわる学会をはじめ、各種研究機関ではニューロエシックスの取り組みをすでに開始しており、セミナーやシンポジウムなどを実施。先進的な脳研究を悪用されないためのさまざまな倫理規定を設けている。(p.204)

Friday, October 23, 2026

岸田秀 『ものぐさ精神分析』

 岸田秀, 1933-, author, Kishida Shū., & Kishida, S. (2024). ものぐさ精神分析 (Zōho shinpan). Chūō Kōron Shinsha.

たとえば、アメリカの独立宣言に表明されている自由、平等、民主の共同幻想の背後には、アメリカ大陸の「発見」当時に北米に一〇〇万はいたと推定される原住民が二〇万を下回るに至った大量虐殺の経験があった。アメリカの共同幻想はこの経験の抑圧と正当化に支えられている。そのため、アメリカの共同幻想は硬直化し、この共同幻想にその私的幻想を共同化しようとする成員(アメリカ国民)に安定感と確実感を与えるものではなくなっている。どこかうしろめたく、うさんくさいのである。またそのため、抑圧し正当化したもとの経験に類似した経験に関して、アメリカ国民の精神構造に盲点が生じ、類似の経験が強迫的に反復されるようになる。
したがって、アメリカは、その不確実感、不安定感を補うため、他民族にその共同幻想を押しつけ、またときには他民族を大量虐殺するよう強迫的にかり立てられている。広島、長崎への原爆投下、ベトナムにおける大量虐殺は、インディアンの大量虐殺の経験の強迫的反復である。(p.p.68-69)

…アメリカが他民族の大量虐殺というその反復強迫をやめるようになるためには、原住民の大量虐殺の経験を正当化するのをやめなければならない。これは大変なことである。それは、欺瞞と暴力で奪った土地を原住民に返すことを意味し、さらに、自由、平等、民主のその共同幻想が偽りに過ぎなかったと認めることを意味する。これはアメリカ国家の基盤を崩すことである。しかし、この正当化をやめないかぎり、今後もアメリカは、チャンスと口実さえああれば、どこかの民族を大量虐殺するであろう。(p.p.70-71)

Thursday, October 22, 2026

岸田秀 『ふき寄せ雑文集』

  岸田, 秀, Kishida Shū. (1997). ふき寄せ雑文集. 文藝春秋.


筆者は十何年か前、戦後の日本の高度経済成長は別の形での対米戦争の継続であると論じたことがあるが、最近あるアメリカ人が同じような見方を述べているのを読んだ(Theodre H. White, "The Danger from Japan", The New York Times Magazine, 1985, 7, 26)。彼は、日本はミズリー号上で降伏文書に署名したことになっているが、太平洋戦争はまだ継続中で勝敗の決着はついていないと言うのである。日本側がこのことを自覚していないのは危険である。こちらは自覚していなくても相手には見えるから、不可避的に認識のズレが生じ、しかもそのズレの原因がこちらにはわからないからである。対米貿易摩擦の一因は日本側のこの無自覚にもあるのではないかと筆者は思っている。(p.53)

              ******************

アイデンティティは過去から現在に至り、未来へと展開する連続性があってこそ保たれるが、この[現代日本の]物語は、明治維新から敗戦までの、とくに戦争中のわが国の歴史を単に「過誤」とか「愚劣」とか「無謀」とか言って無視するだけで、その当否は別としてそれなりに理由があったことを否定するから、連続性を切断して空白の部分をつくる。これでは国家の物語として失格である。
個人の場合も、現在から見て自分でもそのようなことを自分がしたとは信じたくないような愚行がかつてあったとき、「あのとき自分はどうかしていた。あれは本来の自分ではなかった」ということで、現在の自分の物語を「どうかしていない自分」、「本来の自分」だけを材料としてつくるなら、その物語は当の個人のアイデンティティを支え得ないが、それと同じである。
なぜどうかしていたのか、どうかしていた行動へと自分を駆り立てた要因は何かを知り、その要因を自分の物語のなかに織り込むのでなければ、繰り込まれなかった要因が背後から自分の物語を突き崩す。(p.48)

…敗戦後、大日本帝国の物語が、そのようなものを信じていたのは一部の気違いだけだったと言わんばかりに簡単に捨て去られたその簡単さは、この物語の根の浅さを示している。同じ態度から出発した戦後民主主義の物語も同じ運命を辿るであろう。そのうち、あのようなものを信じていたのは一部の馬鹿だけだったということになるかもしれない。
民主主義とは民衆が主人であるということであるが、日本の民衆はいまだかつて主人になったことはない。(p.49)

しかし、…条件をすべて充分に満たした物語を持っている国は見当たらない。アメリカの国家物語(建国神話)がゴロツキの人殺しをピルグリム・ファーザーズという聖者に仕立てあげるという欺瞞を出発点としているため、アメリカに多くの過誤を犯させている…、ソ連の国家物語も欠陥だらけであって、建前と実態との喰い違いが甚しく、そのため、同じ共産圏の周辺諸国とすら摩擦が絶えないだけでなく、国民の多くを収容所に閉じ込めなければならない羽目になっている。朝鮮は北と南で相容れないそれぞれ別の国家物語をもってしまったため、統一を妨げる外的条件が皆無になったとしても統一の見通しは立たない。…しかし、国家が存立するためには物語が必要不可欠であるから、欠陥だらけの物語でも捨てるわけにはゆかず、おいそれと新しい物語も見つからない (p.52)


Saturday, October 17, 2026

岡野守也 『唯識のすすめ』

岡野守也著.(1947- ), Okano Moriya,(1998). 唯識のすすめ : 仏教の深層心理学入門. Nihon hoso shuppan kyokai. 

 二十世紀はどんな時代だったか 

 第一は、近代とは、人類の史上でも最大の戦争を二度もやった時代です。そして使い方次第では人類が絶滅しうるような戦争の道具、核兵器を作った時代だということです。

 …それから第二に、近代、特に二十世紀は、資源の浪費と環境の汚染・破壊という意味で、いわば自分自身の立っている足もと・足場を崩しつつある時代だといっていいと思います。 

 …それから第三点は、近代は、すべてを物質に還元して捉える科学――というより「科学主義」がはびこって、人間の心、精神性、人間が人間として生きていることの意味が見失われつつある時代だといっていいと思います。 …そういう目で人間自身を見ていきますと、人間も結局のところは物の集合体・運動体にすぎないと見えてきます。もちろんただの物には意味がありえません。…意味がないということを突きつめて考えますと、非常に空しくなります。とことん突きつめると自殺したくなったりしかねませんから、ふつうは見つめないで、何となくそういうことは考えないで、とりあえず生きることにしているわけです。

…しかし、人生に意味はないのだけれども、とりあえず自分自身の快感・不快感はありますから、そうなると、「自分の快楽を追及して生きるしかない」という話になりかねません。その場合、根源的に意味がないものには善悪もありえませんから、自分勝手に生きることをとどめるものは、他の人が迷惑だというので止めること以外にはないことになります。そうすると、「迷惑さえかけなければ何をしてもいい」という考え方が一つ出てきます。 もっと突きつめていきますと、「迷惑をかけてもばれなければいい」という考え方にもなりかねません。
もっと進みますと、「たとえばれても自分の方が強くて他者から制裁を受けなければいい」というところまでいってしまいます。 …そういう生き方をみんながしていくと、さまざまなところで社会的に大きな問題が起こってくる。社会的にも精神的にも、深刻な問題が出てくると思います。(p.p.12-15)


分別知とニヒリズム―エゴイズム―快楽主義

日本の庶民は、つい最近まで、神と仏と天とご先祖さまがほぼ同じものだというふうな、漠然とした、しかし根強い世界観を持っていたと思われます。それは、明治維新までは、全国津々浦々、どこに行っても通用する、いわば暗黙の国民的合意だったのではないか、そして、それがみんなが正しく生きることの根拠にもなっており、それは、そうとう程度、最近まで生きていたのではないか、と私は推測しています。
…こうした、一見あいまいのように見えて、実は確かなものだった「より大いなる何ものか」とのつながりの感覚やそれへの畏敬の念、つまり「神仏儒習合」の世界観は、まず明治維新の神仏分離で、弱体化されてしまいますが、それでも戦前まではかなり根強く生きていたと思いますし、それが社会の精神的・倫理的な安定性を支えていたのではないでしょうか(戦前がすべてよかったなどといいたいのではありませんが)。

ところが、戦後、アメリカの民主主義・合理主義的な教育政策によって、公教育と宗教全体も完全に分離されます。そして、公教育の場では、結局のところ、すべてのものは物質主義科学によって説明できる組み合わせにすぎないという結論に至るような知識が、朝から晩まで、子どもの心に注入されていきます。
これは表のプログラムとしては、理性や科学やヒューマニズムを教えているのですが、その裏で、教える側も気づかないうちに、「人間も結局はただのモノであり、だから生きていることには結局意味がないし、人間を超えた神や仏や天などただの神話で、だから生きていることには結局意味がないし、人間を超えた神や仏や天などただの神話で、だから絶対的な善悪もない。だから人間は、自分を大事にして、自分の生きたいように生きるしかない。それは人間の権利だ」という人生観を教えた結果になっているのだと思います。

…しかし人間を超えた「より大いなる何ものか」の存在という絶対の根拠はかんがえられていませんから、ほんの少しずれると「人間はだれだって自分がいちばん大事なのだ。だから、余裕があるときはひとも大事にするが、余裕がないときは大事にできなくてもしかたない」、さらにもう一歩進むと「ひとに迷惑かけなければ、自分がやりたいことは何だってやっていい」という、小市民的なエゴイズムになってしまいますし、さらに一歩誤ると「悪いことをしても、ばれなければいい」、さらに「悪いことをしてばれても、自分に力があって社会的な制裁を受けなければいい」というところまで行ってしまう危険を底に秘めています。

つまり神も仏も存在せず、モノがあるだけの世界は、つきつめると必ず意味がないということになります。それがニヒリズムです。

そして、人間の命もモノの寄り集まりにすぎないのですから、もちろん意味はないのですが、なぜか生きていて、とりあえず自分の気持ちいい悪い、好き嫌い、快不快はありますから、それを追及して生きるしかない、と考ええる。それが快楽主義です。そうしてみても、死んだらすべて終わりで意味ないのですが。

つまり、近代的な理性、科学主義的な世界観には、もちろんプラス面もあったわけですが、そのマイナスの面が徹底的に進むと、必然的にニヒリズム―エゴイズム―快楽主義に陥ってしまうという本質的な限界を持っています。それは、人類が歩みを始めたときからずっとかかえていた分別知の限界なのです。(p.p.394-397)

Sunday, August 17, 2025

藍原寛子 『フクシマ、能登、そしてこれから』

 Aihara, H. (2025). フクシマ, 能登, そしてこれから : 震災後を生きる 13人の物語. 婦人之友社.


「風評被害」への異議―あきらめない

今、水戸さんは、国や電力会社、行政が「風評被害」という言葉で市民の言論を封殺しようとしているのでは、と懸念する。18年8月、福島原発の汚染水海洋投棄を議論する経産省の公聴会が郡山市で開かれた。水戸さんは意見発表人として出席、主催者側が会の冒頭で使った「風評被害」という言葉を、「放射能に対する不安や議論を封じ込める言葉だ」と指摘した。(p.93)

「現場に足を運ぶこと」の重要性

福井県の敦賀、美浜の原発が林立する地域を通り、その先々で地元の人から直接、原発の話を聞いた。
興味深いことに、複数の人と一緒に会っても誰も意見を言わない。ところが1人に個別に会って話を聞くと、ボソボソと本音を話しだした。何度か通ううちに、敦賀市の僧侶で反原発運動に携わる立花正寛さんに会う。立花さんは「長い間坊主をやっているけれども、がん患者以外の葬儀はしたことがない」と語った。立花さんは夜、門徒さんたちから話を聞く機会を設けてくれた。すると、彼らは次々に「うちの息子が取られてな」「うちの息子も取られた」と悲しげに語った。「取られた」という意味を尋ねると、「電力会社に息子が殺されたという意味だ」と打ち明ける門徒さんたち。
…さまざまなことを教えてくれた立花さんも、がんのために亡くなった。
(p.p.196-197)

活断層のリスクを軽視しない

北野さんは24年5月の志賀原発廃炉訴訟の口頭弁論で、原告団長として「志賀原発周辺は大きな活断層だらけ。珠洲原発同様、建ててはいけないところに建ててしまった」と活断層評価や避難計画の問題点を指摘した。 
「…能登半島地震で、かなりの人が『もし志賀原発が動いていて事故が起こったら、閉じ込められ、見放されたまま被ばくするかもしれない』と危機感を抱いた。原子力ムラは巨大でしぶとい。でも住民が自分の問題として捉え始めている」。
(p.223)

のと、と、ふくしま、と

珠洲市狼煙町で、発災後、住民が農家のビニールハウスに集まって避難生活を送った地域を訪ねた。
…ビニールハウスで生活した1人の高齢の女性が、私の車の「福島」ナンバーを見つけて、「福島からきたの」と驚いた。
…その女性は、周りに誰もいないのに小声になった。「私はあの時、[珠洲]原発に反対したんですよ。私ら、原発に反対した人たちは、計画が凍結されてからもいっぱい嫌がらせを受けました」。元日の地震直後、この地域も孤立集落になった。(p.p.224-225)

Wednesday, July 9, 2025

Stout, M.『良心をもたない人たちへの対処法』

Stout, M., & Akiyama, M. (2023). 良心をもたない人たちへの対処法. 草思社.

ソシオパスを定義づけるもの

 サイコパスもソシオパスも同じ意味でよく使われているのだ。いずれも良心が欠如した個人でありそうした者のなかには暴力的な傾向をもつ者がいれば、そうでない者がいる。
(p.32)

司法の目さえあざむく

彼らの多くは、普通の人たちと同じように、投獄や死刑の宣告など望んでおらず、そんな状況に追い込まれないように注意している。恋人を破産に追い込んだり、同僚の経歴を台無しにしたり、あるいは、無防備な人の心に生々しい傷を刻み付けることに比べれば、殺人の場合、犯行が発覚する公算ははるかに高く、厳しい断罪から免れるのは難しい。罪悪感がないので、行動を制限する心の仕組みはもちあわせていないが、彼らは彼らで抜け目なく計算している。
…通常、ソシオパスが直接的な暴力に及ぶのは、社会の目から隠れて行える家庭内においてだ。…家庭内暴力は起訴されても立証が難しく、そもそも起訴されるケースが少ないので、ソシオパスにとってはブレーキもかかりにくい。

刑務所はソシオパスであふれていると思われがちだが、これも事実と異なる。それどころか、犯した行為で逮捕・投獄されたソシオパスの例はむしろ珍しいくらいなのだ。ソシオパス(と彼らの被害者)について調査を進める研究者は、現在の法律体系では彼らの犯行を漏れなく捕捉することはできない現実を突き止めた
アメリカの刑務所に収監されている者のうち、ソシオパスは平均で二〇パーセントにすぎない。

…多くの人たちにとって、生きることは真摯に向き合うべき営みで、その最大の見返りは他者の愛であり、人との結びつきだ。
だが人を愛せない人間がこの世にはいる。人みなすべてが良心をもっているわけでもない。それどころか、良心をもたない人たちという限られた少数派は、人に苦しみをもたらし、苦しみにあえぐ相手の姿を楽しんでいる。(p.p.38-41)

ガスライティングは、被害者自身が自分の正気を疑う心理的虐待の一種で、この名称は一九四四年に公開された映画『ガス燈』に由来している。
…ガス燈は劇中で使われているトリックのひとつで、家のガス燈を明滅させ、これは自分の妄想なのだと妻に思い込ませていく。第三者から見ると、ガスライティングという心理的虐待のもっとも痛ましい点は、一見すると無意味な手口であるため、第三者からすれば、被害者が漏らす不満があまりにも奇妙で、被害妄想じみたものに思えてしまう点にある。そのため、被害者が脅えている危機状況がまったく信じられなくなってしまうのだ。(p.p.120-121)

”閉鎖系”の関係にはびこる職場のソシオパス

職場のソシオパスに見られる特有の行動

・被害者をほめそやす
・自分を大きく見せようとする
・親切で役に立つふりをする
・誘惑しようとする
・嘘をつく
・他人に過大なリスクを負わせようとする
・他人の共感を得ようとする
・他人のせいにする
・脅して自分の意に沿わせる
・血も涙もなく平気で人を裏切る

…[被害者側には]挫折感や徐々に希薄になっていく自己肯定感、他者を信頼する能力の大半が失われ、自分さえ信じられなくなるという、ソシオパスに翻弄された者ならではの様子がうかがえる。

職場において、精神的な疲れを強いられる、不安定な閉鎖系〔当事者しか知らない孤立した状況〕におちいっていたら、閉塞した関係の風通しをよくするため、少なくとも外部の誰か一人以上に現状を打ち明けておくことをおすすめしたい。
その場合、打ち明ける相手は、会社とは無関係の親しい友人や家族、あるいはセラピストでもかまわない。話す際にも「ソシオパス」などの専門用語を使う必要はまたくなく、職場でいま起きていることを話すだけでいい。

また、自分の窮地に対して、相談相手がただちに解決策を教えてくれるとか、自分と同じ意見であると期待してはならない。…外部の声をインプットして閉鎖系を押し開くことはなによりも大切だ。第三者に事情を話し、話を聞いてもらうことで動揺は鎮まり、何が起きているのかについて、それまで以上に客観的に考えられるようになる。心に余裕ができれば、ソシオパス特有の行動パターンが見極められるので、こうした関係に自分をおとしいれた相手の正体が明らかにされるかもしれない。
(p.p.120-125)

職場のソシオパスから自分を守る五つの原則

⑴ 心のプライバシーを守り続ける
攻撃してくるソシオパスに対し、相手の願い通りに怒ったり、脅えたり、うろたえたりする姿を見せてしまうと、彼らの支配欲をますます高めてしまう。彼らは被害者の脅えを糧にしているので、被害者が苦しむほど彼らの人心操作は激しくなる。望みは被害者を”支配する力”であり、うらうぃかいて剝き出しになった被害者の素の心を見て楽しんでいる。それだけに心のプライバシーを守り抜くことができれば、彼らは期待通りの結果が得られない。

冷静を保つことがなにより大切だ。感情のコントロールができないなら、動揺が表情やしぐさに現れないようにする。…何をされても動揺しない事実と、彼らの問題行動こそ社員全員の目標に対する障害だと自分は考えているという警告を与える。

⑵ 何をすべきか十分に考えたうえで判断する

ソシオパスの問題に直面して、会社にとどまって最後まで戦い抜くのか、あるいは自分の生活を台なしにする会社から離れるのが望みなのかきちんと考える。…自分の事情を最優先し、できるだけ早く会社を辞めることは卑怯なことではない。身の安全と自分が愛する者たちに対する責任を果たすこともまた、正しい判断なのである。 

⑶ どのような手順で進めていくのか

まず、彼らの行動は徹底して記録に残しておくことである。
…告発者を敵と考えるソシオパスは、相手が不在のときをねらい、十中八九、あなたの備品を盗み見ようとするはずだ。…仕事に関係のない私信などの書類はひとつ残らず会社から引き揚げることを忘れてはならない。無難な私物にすぎないが、他人の個人情報を悪用する手口に長けているのが彼らなのだ。

⑷ 私情は交えず、会社の利益を訴える

会社の上層部に近い役職者との面談を設定する。…人事部や直属上司を通したりしていては、ソシオパスの息がかかった者を相手に交渉する可能性が高まる。
私情は交えずに話を進める。自分の利益を求めてこの場にいるのではない。大きな犠牲を強いる組織内の問題について知らせ、その解決を提案するためにここにいるのだ。個人的な感情は控え、自分の被害者意識も訴えてはならない。
…また、「ソシオパス」などの心理学用語ではなく、誰にでもすぐに理解できる、明白でありきたりの言葉を使って話を進める。「話に嘘が多い」「仕事をごまかしている」「嫌がらせが絶えない」「人をだまそうとする」「人を操ろうとする」「ものがなくなる」などのような、彼らの不誠実な言動がこれほど大きな損害を会社に及ぼしているのか、その点に沿って話を進めていく。

⑸ 「会社の対応」をふまえて身のふり方を考える

 会社がなんらかの対策を講じ、ソシオパスを封じることができれば苦労した甲斐もあるので、その意志があるなら、会社にとどまって仕事を続けていけばいい。
しかし、進言に対して会社がなんの反応も示さず、ソシオパスへの対応を個人の問題のままにしておくなら、この会社は人生の貴重な時間を捧げるのにふさわしい場所かどうか判断しなくてはならない。…あなたはソシオパスには支配されておらず、彼らの罠にはめられたわけでもない。自分の意志にしたがって会社を辞めることで、心のプライバシーを守り、自分自身であり続け、平穏な毎日にふたたび戻るため、前向きな行動を起こしたのだ。
(p.p.130-137)

ソシオパスの戦意をそぐ「無関心メソッド」

{ソシオパスは}絶えずつきまとうこの退屈をなんとかしようと、刺激と高揚感への渇望がかき立てられていく。こうした状況のもとでは、あなたこそ退屈をまぎらわす格好の気晴らしなのだ。
…相手が脅したり、挑発したりするような言動を示しても動揺したそぶりは見せず、まったく気にしていないふりをして応じるのだ。もちろん内心では尋常ではない動揺を感じているはずだ。…しかし相手の前では、気にしていないようにふるまい、話を交わさなくてはならない。警戒心や恐怖心、あるいは怒りを悟られないよう、まったく無関心を装うのだ。
…被害者の警戒心や恐怖心、怒りとは、ソシオパスにとっていわば心理的なドラッグなのだ。相手がこのドラッグの中毒者なら、被害者がやることは、相手のハイな気分を台なしにしてやればいいのだ。
…気持ちがすぐに表れてしまう人でも、多くの人たちがこの方法を実に効果的に使ってきたので、どうか安心してほしい。動揺が表に表れないようになるにはいささか練習して慣れておく必要があるが、準備すればまちがいなく実行できる。
(p.p.180-181)

ソシオパスはなぜ専門職に多いのか

良心をもたない人のなかには、社会的な評価というきらびやかな衣装をまとうことで、ほかのソシオパスより巧妙に正体を隠している者がいる。
…ひとつは、わたしたちには立場と肩書に応じて人を値踏みする傾向があるか点だ。つまり、地位の高い人ほど人格者だと思い込んでしまう。
…二つ目は、ある種の専門職には、ソシオパスにとって喉から手が出るほど魅力的な特権が備わっている点だ。教師や医師、聖職者やセラピストは、大勢の人たちに対して「対人関係の影響力」があり、相手から疑いの目を向けられることはほとんどない。また、外部の干渉を受けないプライバシーが確保されているので、職場環境によって第三者の目から容易に逃れることができる(これも別のタイプの閉鎖系といえる)。
…専門職のソシオパスについて、わたしに寄せられる話のなかでも、群を抜いて多いのが教育関係者と医師に関してである。
(p.p.138-139)

ソシオパスが抱える二つの弱点

・ソシオパスに関する客観的な情報を念頭に置いておく
・最終的な目的を変えてみる(何を目的に戦っているのか見なおしてみる)
・相手の目的でなく、自分の目的について重点的に考えをめぐらせる。
・自分の感情を相手に悟られないようにする。
・良心と共感をもつ人たちとのつながりを深める
・相手との対応はあれもこれもと取り組まず、実行可能な範囲で小分けする
・自分のペースを崩してはならない
・理性的に考え。結末を重んじて行動する
・ストレスマネジメントを心がけ、健康管理に気をつける

ソシオパスは自分から始めた攻撃であるにもかかわらず、二つの弱みを抱えており、これらはたがいに関連している事実を理解しておいてほしい。

⑴ソシオパスが”勝利“を実感できるのは、被害者を思うように操り、支配しているときだけで、こうした形で実感できなくなってしまうと、攻撃そのものへの興味をやがて失っていく。被害者は勝つ意味(目標)を自分で設定できるので、彼らよりも柔軟に戦うことができる。

⑵ソシオパスは、他者の感情を悟れず、共感を覚える基層をもっていない。他者の感情に普通の人が数学の問題を解くように。、頭を使い、知的に判断することでしか理解できない。したがって、彼らに挑発されたとき、少しでも自分をコントロールできれば、本当の気持ちを彼らから隠せるのだ。そうすることによって、ソシオパスがなにより嫌がる「退屈」という天敵の出現をうながすことができる。(p.p.242-243)


適度な自己愛と病理的な自己愛

ソシオパスの場合、欠けているのは良心と他者への共感の両方だが、ナルシシストに欠落しているのは他者への共感だけなのだ。ソシオパスは他者とは感情的に結びつくことができず、他者の感情を直接感じ取れない。これに対してナルシシストは、他者の感情は感じ取れないが、彼らなりの形で他者とのつながりをむすぶことができるのだ。
…
適度な自己愛(健全なナルシシズム)は、精神的な発達を遂げ、大人になって健全な精神生活を送るうえで、誰にとっても必要とされるが、過剰なほど肥大して、他の感情を圧倒するようになるとナルシシズムに苦しむようになる。このような状態になると対人関係を損ねるばかりか、ほかの人を苦しめるようになるので、専門家のなかには、この状態を「病理的」「有害」「悪性」なナルシシズムだと形容する者もいる。
(p.p.251-252)

ナルシシストに感染しやすい人たち

反社会病質のリーダーと自己愛のリーダーの心理学上のちがいとは、前者は嘘と人心操作と恫喝によって他者に働きかけ、一方、ナルシシストのリーダーは嘘とマニピュレーション、そして情動感染によって人に影響を与えている。
…もしも自分のもとにドナルド・トランプと同質の人格的特徴を示す患者がきたら、その患者はまちがいなく自己愛性パーソナリティの持ち主にちがいないと、わたしはまえまえから考えてきた。彼に見られる人格的特徴は、仰々しいふるまい、他者に対する共感のみごとなほどの欠落、そして、注目され、称賛されることへの過剰すぎるほどの欲求だ。

…ソシオパスが力を実感するために他者を支配するなら、ナルシシストは自分への称賛のために他者を支配している。

ナルシシストの妄想に水を差し、誰も応じなければ彼らは不満を募らせ、感情は高ぶり、ついには憎悪に満ちた怒りを抱え込む。相手が応じない場合、ソシオパスなら計画をやり直すか、微妙な調整をくわえたり、それまで以上に魅力的にふるまったりする。あるいは、さらに脅しをかけるかもしれない。一方、ナルシシストはますます情熱的になり、彼の信条は説得力に富んだ、きわめて破壊的なものになっていく。ソシオパスの言動はこれという信条とはまったく関係ない。彼らの破壊的な言動は冷酷なロジックにもとづき、唯一の目的は被害者との”ゲーム”に勝つことだ。ナルシシストのように妄想でしかない感情の王国を守るために、自分を見失い、ゲームを破綻させるようなまねはしないのだ。
(p.p.256-258)


”熱い”ナルシシストと”冷たい”ソシオパス

この二つの人格障害にもっぱらうかがえる特徴は、いずれも虚言と狡猾さだ。ソシオパスは嘘をついて被害者を混乱させ、自分の意志にしたがわせている。あるいは「楽しい」という理由だけでそんな言動に及んでいる。一方、ナルシシストが嘘をつくのは虚構の世界を守り、他者から自分が必要とするもの(一貫した称賛と相手の同意)を汲み取るためだ。一般的にはどちらも「病的な虚言者」とよく言われている。そして、両者とも他人を利用する手段として、ずる賢くふるまい、人をあざむこうとする。ソシオパスは生まれつきの詐欺師で、ナルシシストは虚構の人格という世界の住人だ。いずれも、嘘をつき続けていなければ自分の世界が破綻してしまう。

ソシオパスがのどから手が出るほどほしがってるのは、人を支配することと権力である。勝つことそれ自体が目的で、そのために脇目をふらずに戦いに没頭する。ナルシシストは自分が秀でていることを見せつけるため、常に人よりも上位にいなければならない。それだけに、他人の権力と業績に対しては病的な嫉妬心を抱いている。
(p.265)

Sunday, July 6, 2025

大鶴和江 『「ずるい攻撃」をする人たち』

 Ōtsuru Kazue,  (2024). 「ずるい攻撃」をする人たち : 既読スルー、被害者ポジション、罪悪感で支配. 青春出版社.

2020年頃、福岡県でママ友たちの間で孤立した女性が、支配的なママ友に洗脳され、我が子を虐待、餓死させてしまうという悲惨な事件もありました。
これも支配的なママ友がグループ間に悪口を言い、ターゲットになった本人を孤立させ、その孤立したターゲットに対して「私だけがあなたの味方よ」と安心させて、金銭を搾取し続けたのです。

このように仲良しのグループの仲を引き裂く人を「サークルクラッシャー」あるいは「フレネミー」とも呼びますが、言い換えれば「他人の幸せが許せない人」です。
このような人は、自分の欲求不満やストレス、周りへの敵意を表現できない人が多く、表面的には「いい人ポジション」を取り、心配するふりをして他人をおとしめる行為を行ないます。

このような「他人の幸せが許せない人」のターゲットにならないためには、他人の悪口を手土産にして近づく人物には最初から警戒するということが大切です。
うっかりその悪口に賛同してしまうと、あとで「〇〇さんも同じようにあなたの悪口を言っていた」という言質を取られてしまう可能性があります。
…そのような人物に対しては、警戒して秘密は明かさないよう心掛けることと、想像や他人の言葉ではなく、現実や事実を見て客観的に判断する意識を持つことが大事になります。
(p.p.64-65)

Friday, December 6, 2024

中村裕美 「味覚の人為的制御」

 健康と疾患を制御する精密栄養学 : 「何を、いつ、どう食べるか」に、食品機能の解析と個人差を生む分子メカニズムの解明から迫る. 羊土社.

味覚電気刺激による味覚の制御

味覚電気刺激による味覚提示は、新たに呈味物質を口腔内に取り込むことなく、すなわち余分な成分を追加せずとも飲食物の呈味を制御できる。…また、刺激装置の構築も安価・小型・軽量で実現できること、即時性、可塑性に優れ時系列的な変化を加えられること、刺激位置によって味を感じる位置も変化することなど味覚表現のダイナミックレンジの広さが、エンターテインメント的用途での活用においても優れている点だろう。

…筆者らは2021年に、経皮電気刺激といって顎と首後ろに電極を貼り付け電気刺激を与える手法を用いて陽極刺激を与えた際に、塩味を最大3倍まで増強できることを実験で検証している。

Thursday, November 14, 2024

佐渡龍己 『テロリズムとは何か』

 佐渡, 龍己, & Sado, R. (2000). テロリズムとは何か. 文藝春秋.

正規戦とテロリズムの違い

テロリズムは自己の力が弱いため、交戦という物質的強力行為ではなく、恐怖という精神的強力行為を手段として、直接、政策決定者あるいは他の強力な力(民衆、第三国、国際世論)を利用して、自分たちの意志を強要することを目的とする。(p.87)

Sunday, June 16, 2024

SILENT WEAPONS: EXAMINING FOREIGN ANOMALOUS HEALTH INCIDENTS TARGETING AMERICANS IN THE HOMELAND

[沈黙の凶器:アメリカの国民を標的にした国外勢力による特異な健康被害事例に関する調査]

Homeland Security Committee | Republican

U.S. House of Representatives

H2-176 Ford House Office Building

Washington, DC 20515




What: A Subcommittee on Counterterrorism, Law Enforcement, and Intelligence hearing entitled, “Silent Weapons: Examining Foreign Anomalous Health Incidents Targeting Americans in the Homeland and Abroad.”

When: Wednesday, May 8, 2024, at 2:00 PM ET

Where: 310 Cannon House Office Building

 https://homeland.house.gov/hearing/silent-weapons-examining-foreign-anomalous-health-incidents-targeting-americans-in-the-homeland/

Monday, November 27, 2023

内海聡 『テレビが報じない精神科のこわい話』

 内海 聡 & くらもと えいる. (2018). テレビが報じない精神科のこわい話 : まんがで簡単にわかる! : 新・精神科は今日も やりたい放題. ユサブル.

「薬の服用後なぜか死にたくなった どうして飛び降りたか覚えていない そんな証言が自殺からの生存者たちから寄せられたんです」
[遺族への聞き取り調査で]対象となった1016人の自殺者のうち、精神科を受診・治療中だった人は701人で、69.0%を占めました。さらに08年1月以降では883人のうち632人と、71.6%にのぼっています。そのうち自宅マンションから飛び降り自殺を図ったケースでは100%、つまり全員が向精神薬を服用していました。
…抗うつ剤と覚醒剤は類似物質なのですから、飛び降りたいという衝動に駆られるのも、まったく不思議なことではないのです。(p.p.56)


精神医学は適当な理論で成り立っている
科学的根拠のない精神医学

今ある疾患理論、薬物理論というのは現在でも全て仮説であり、説明されたり因果関係を導けたりするものが何ひとつないのです。
…内科や外科など、他の分野の病気であれば、その診断基準に、科学的、数値的な根拠が必ず存在します。しかし精神医学にはそれがないのです。
(p.p.77-78)

「売りたい薬 売りたい人間 その薬を処方して じわじわ薬を増やして 長く通わせて儲けたい人間 その集大成が精神科医療だと私は思っています」
ここで重要なポイントは、本人が自殺目的で大量服用したのではない、ということです。…主治医の精神科処方を守り、決められた通りに飲んでいたら不審死に至ってしまったということなのです。…これほど危険であるにもかかわらず、製薬会社と精神科医が儲けるために精神薬は使われ続けています。(p.p.79-80)


医療保護入院での恐怖体験!

Q. 医療保護入院って何?
A. 自傷・他害の恐れがない精神障害者でも、病院判断、家族の同意があれば強制入院させられる制度です。

精神障害と判断する基準があいまいなため家族間のトラブルの時に悪用されることが多々あり
(p.105)
[被害者の証言]
裁判では[強制入院させた]あの医師が統合失調症の判断基準も知らずに今まで数千人以上の人を診察診断してたのを知った時には、怒りで震えました
(p.121)


製薬会社と権力者の繋がり

世界有数の巨大製薬会社であるグラクソスミスクライン(GSK)が販売した「パキシル」という薬は1992年の発売以来、依存症に関して3200件、出生異常で600件以上、自殺と自殺未遂でも約450件の訴訟をおこされています。

その中の、ある裁判において、「マイナスの研究結果は隠蔽する」と記述されたGSK重役によるメモが明らかにされました。それとは別の裁判でも同社重役の「ダメでも結果は隠せる」と記述したメモが冒頭陳述で読みあげられてます。

また、2017年の製薬会社の売上高で世界第2位のファイザー社も、同社が販売する「ガパペンチン」(てんかん薬)のマーケット拡大に不都合な研究結果のもみ消しや改ざんを行っていたことを示す社内文書がみつかっています。(p.p.197-196)

Thursday, October 12, 2023

Ana Beatriz 『あなたの日常に潜む、異常人格者 サイコパシー』

 Silva Ana Beatriz Barbosa and 宮城 ジョージ. サイコパシー = Psychopathy : あなたの日常に潜む 異常人格者 : 現代社会に野放しにされた捕食者たちよ. ヒカルランド 2016.

権力を奪い取るための5つの計画とは?

計画その1 会社に入る

計画その2 現場をじっくりと観察する

計画その3 周りの人と事実をマニピュレート(操作)する

計画その4 不必要な人を切り捨てる

スーツとネクタイ(昇進)を手にしたサイコパシーは、ここまでたどり着くのに利用していた人を切り捨てる。目標が達成されればもう用はないからである。自分の獲物が何も言えないようにするために弱みを握り、歯向かえば恥をさらすと脅すのである。そのためサイコパシーに利用された人ほど、その事実について触れたがらない傾向が強い。


計画その5 権力を奪い取る


(p.p.124-127)

Monday, March 1, 2021

Begley, S., 『脳を変える心』

ダライ・ラマと脳学者たちによる心と脳についての対話

Begley, S., & Mogi, K. (2010). Nō o kaeru kokoro: Darai rama to nō gakushatachi ni yoru kokoro to nō ni tsuite no taiwa. Tōkyō: Bajiriko.

The original title: Begley, S. (2008). Train your mind, change your brain: How a new science reveals our extraordinary potential to transform ourselves.

製薬会社からは歓迎されなかったが、神経科学者ヘレン・メイバーグは二〇〇二年に、鬱病発症者の脳に対する効果は抗鬱薬でも偽薬でも同じであると示した。メイバーグがテキサス大学健康科学センター・サンアントニオ校の研究者とともにおこなった実験で、鬱病が治った患者に用いられた治療薬は、広く処方されているパキシルなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であっても、患者が坑鬱薬だと思い込まされているだけで同等の効能をもたない偽薬であっても、脳の活動が同じように変化したことを確認した。fMRI画像によれば、どちらの場合も活動は大脳皮質で増加し、大脳辺縁系で減少していた。(p.p.219-220)

Saturday, July 18, 2020

岡田尊司『脳内汚染』

Okada, T. (2008). Nōnai osen. Tōkyō: Bungei Shunjū.


ゲーム制作者のハウランドは、職業的な見地から、ゲームには五つの中毒性の要素があるとしている。①ゲームを終了させる中毒、②競争の中毒、③熟練の中毒、④探索の中毒、⑤高得点の中毒である。…ゲームは最高の叡智を傾けて、中毒を起こしやすく設計された、一種の「合成麻薬」だということである。
『タイム』誌によると、ビデオゲームにこうした麻薬的な依存性があることは、ゲーム開発者の間では公然の秘密だという。タイム誌が接触したあるゲーム開発者は、匿名を条件に次ぎのように語っている。
「ビデオゲームは、すべてアドレナリンを出せるかどうかにかかっている。アドレナリンを出させる一番手っ取り早い方法は、やられると思わせることだ」
医学的にいって、交感神経からアドレナリンがもっとも盛んに血液中に放出されるのは、ファイト・アンド・フライト、つまり、やるかやられるかという危険の中で、必死に戦うか、逃げている瞬間である。そして、敵を倒し、危険を逃れたとき、達成感とともに、脳の中ではドーパミンが放出されることになる。
覚醒剤打ったときも、ギャンブル中毒の男がギャンブルをしているときも、アドレナリンとともに、ドーパミン・レベルの上昇が起きている。アドレナリンは、心臓をどきどきさせ、ドーパミンは気分を高揚させる。
ゲーム開発者は、今にもやられそうな状況を、できるだけリアルに体験させるシチュエーションを作ることで、体にはアドレナリンを、脳内にはドーパミンを溢れさせる。そのために、日夜知恵を絞っているのだ。(p.p.100-101)


テレビをはじめとする映像メディアに、人々がどれほど依存しているかは、それに依存することをやめようと思う人がほとんどいないため、まったく意識されないほどである。

だが、映像メディアのない環境に置かれると、依存を形成している人は、しだいに落ち着かなくなり、映像メディアの探索行動を開始する。せっかく旅行に行ったのに、ホテルに着くなり、テレビを見始める人では、そうした依存が疑われる。いつも見ている番組の視聴を遮られると、ひどく不機嫌になり、攻撃的な反応を示す。普段は穏やかな人が、そうしたときだけ血相を変えることもある。ある研究では、一週間テレビの視聴をやめさせる実験を行ったところ、イライラが増え、口論や殴り合いのケンカが起きてしまったという。テレビ依存も、ゲーム依存同様、物質依存と変わらない性質を持っているのである。(p.124)

Tuesday, April 21, 2020

Moreno, 『操作される脳: Mind Wars』

Moreno, J. D., Kubota, K., & Nishio, K. (2008). Sōsa sareru nō: Maindo uōzu. Tōkyō: Asukīmediawākusu. 
(The original title: Jonathan D. Moreno, Ph.D., "Mind Wars - Brain Research and National Defense")

臭気兵器の設計者は長らく糞便の臭いに心を奪われていたようである。一九九八年の軍の文献によれば、第二次世界大戦の際の発想は、ドイツ占領軍にこっそり「フー・ミー(Who Me)」という化学薬品をなすりつけて、「物笑いの種」にしてやろうというものだった。(p.296)

二〇〇一年六月、テキサスの、元海軍中佐が代表となっている企業と海軍研究所の科学者とが、糞便の臭いの元となる化合物に対する特許を取得し、「不愉快な嗅覚刺激を用いて、人間の行動をコントロールしたり変更させたりするという手法は、現代の戦争において魅力的な発想である」と述べている。エッジウッドでも「米国政府基準トイレ臭気(U.S. Government Standard Bathroom Odor)」を用いた同様の研究が行われている。(p.298)


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ばい菌を戦争に利用しようという発想は(城壁から感染した馬の死骸を投げ込むといった雑な形ではあったが)古代から存在していた。現代的な微生物学は、単に経験に頼るのではなく「合理的」な方法で病原体を選択、さらにいは設計することまで可能にしている。…アメリカ、イギリス、カナダは共同で攻撃用の秘密生物兵器プログラムを立ち上げたが、これには米国陸軍化学戦サービス(Army Chemical Warfare Service)が関係していた。
(p.325)


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一九七二年に、アメリカは生物兵器に関する国際条約、生物毒素兵器禁止条約(Biological and Toxin Weapons Convention/BTWC)を批准した。この条約は平和的および防衛目的の研究以外は許されない、と明言するものである。ソビエト連邦も批准国となったが、アメリカが生物兵器プログラムを終了させたことを信じようとしなかった。その疑念のもと、ソビエトは大がかりな最高機密システムを構築した。これはバイオプレパラートと呼ばれ、民間の皮をかぶって少なくとも一九九二年までは活動していた。
…一九七九年には、スヴェルドロフスクの生物兵器工場から炭疽菌が漏出する事故が起こったのである。正確な死亡者数は知られていないが、見積もりは六六人(ソビエト当局の発表数)から一〇〇人以上まで様々である。
(p.p.325-327)


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アメリカ科学者連盟(Federation of American Scientists/FAS)の生物兵器の専門家であるバーバラ・ハッチ・ローゼンバーグが『ディスアーマメント・ディプロマシー(軍縮外交)』という機関紙に書いた論文によれば、生物毒素兵器禁止条約が一九七五年に発行してから一五~二〇年間というもの、国防総省が行うプログラム自体が機密扱いにされることはなかったものの、「アメリカ軍の欠陥や脆弱性、あるいは技術の飛躍的な発展」を明らかにするような研究結果については機密にされていた。

その後、おそらく湾岸戦争とソビエトのバイオプレパラートの発覚とが原因なのだろうが、国防総省は方針を変えたように見える。9・11のちょうど一週間前、『ニューヨーク・タイムズ』は、機密扱いされていた三つの生物兵器防衛プロジェクトについて報道し、条約を都合のいいように解釈していると指摘した。三つのうち、一つはワクチンに耐性を示す炭疽菌の作出だったが、ソビエトがそのような炭疽菌を生産したと考えられていて、それに対する防衛方法を見いだすためというのが大義名分だった [注182] 。アメリカと西側同盟諸国はこの暴露に動揺を示したが、9・11の攻撃が起こったために、沈黙に転じた。(p.339)


[注182]…ニューヨークタイムズがすっぱ抜いたプロジェクトについてアメリカ政府官僚は防衛目的だと主張したが、細菌工場で炭疽菌を大量に培養し、細菌爆弾のモデルを炸裂するなど、兵器開発そのものと言える点があった。

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ウイルスのような生物兵器は三つの要素が関係する。まずペイロード、つまりウイルスの遺伝情報、次にウイルス外皮など送達システムに関わるもの[注183]、さらに、人体の器官系など標的とされるものであり…いずれも、遺伝子工学で病原体を加工することによって操作し得る。たとえば、ウイルスか細菌の病原体に、外来、あるいは合成した遺伝子を挿入すれば、野生株が本来もたない性質を加えることができる。うまくいけば、脳や神経系を標的にした新型神経兵器の開発が可能なのだ。



[注183]ウイルス兵器は人体の細胞内に侵入することによって効果を発揮する。細胞内に侵入する際、ウイルスは、対象となる細胞表面の受容体など、特定のタンパク質に結合するが、ウイルス側に細胞表面のタンパク質が存在していなければ結合できず、侵入もできない。人体を構成する細胞は、種類によってそれぞれ特定のタンパク質が細胞膜に発現している。ある特定の細胞にウイルスを感染させたいと思ったら、その細胞のみで発現するタンパク質に結合できるタンパク質をもつように、ウイルスの遺伝子を操作すればよいことになる。


過去、旧ソビエト連邦では攻撃目的の生物兵器開発計画が進められていた。…先進的ウイルス神経兵器によって、短いペプチド鎖(アミノ酸が鎖状に結合したもので、生物活性を有する)をコードする合成遺伝子を中枢神経に送り込むというものである。中枢神経系に入ると、合成遺伝子をもとにデザイナーペプチドが生成され、それが奇襲攻撃を行うのである。このペプチドの効果は、その病原体が通常引き起こす症状とは全く違う。たとえば、脳内で生成されると悪性の神経変調物質として働き、ニューロン間の関係や通信を変化させて脳の機能を無効にしてしまう。感染性病原体としては、合成遺伝子を速やかに標的に送り届ける能力をもつものが選ばれる。この新型神経兵器において、病原体はまさにトロイの木馬であり、通常ならば到達できないようなところまで遺伝子を送り込むことが可能になる。
(p.p.347-348)



「…部隊(ユニット)が機能するための能力は、すべて頭のなかにあります。そうすると、もし恐怖やその他の感情によって部隊の忠誠心を崩壊させることができれば、軍隊は、力をもって戦う存在であることをやめてしまうでしょうね。たとえば閉所恐怖症に襲われた兵士は防護マスクをむしりとってしまうでしょう。他には、恐怖、のどの渇き、心拍数増加、腸の運動亢進とか……。ペプチドの効果としてはこのあたりが狙われていると思われます。」(生物兵器の専門家) (p.350)

 Russia accuses US of running a biological weapons lab in Georgia

Wednesday, December 11, 2019

甘利俊一 『脳・心・人工知能』

Amari, S. (2016). Nō, kokoro, jinkō chinō: Sūri de nō o tokiakasu. 

心を読む ――脳と機械を結ぶ技術BMI

脳科学は、脳の仕組みを明らかにしたい。もし脳内の情報が外部から読み取れるなら、研究が大いに進む。こうして登場したのがBMI(Brain-Machine Interface)である。

…さらに、外部から脳に情報を直接に入れることができれば、これもまた素晴らしい技術が作れる。目の見えない人の脳に、視覚情報を直接送ることができるようになるかもしれない。現に人工内耳は、聴覚細胞を直接に刺激して外の情報を脳内に送り込む。


…BMIは脳内の情報を取り出して解読し、また、脳に情報を直接送り込む技術の総称である。脳内から取り出した情報をコンピュータで解読し、これを処理して再び脳に送り込めば、脳とコンピュータをつないだ仕組みができあがる。アメリカの軍事技術として誕生したとはいえ、これは脳科学、そして現代社会に大きな影響をもたらす技術である。(p.p.219-220)

ATR脳情報通信総合研究所の川人光男に代表されるグループは、脳の活動の情報をただそのままフィードバックして知らせるのではなくて、しかるべき部位の脳情報を解読してこの情報[いまが望ましい状態にいるか否か]をフィードバックする技術を開発した。…これを「脳情報複合フィードバック法(DecNef:Decoded Neurofeedback)」という。(p.221)

…斜め30度の線分を検出する[脳内の]部位のニューロンが活動したとしよう。脳は必要なとき以外にもいろいろな活動を行っているから、これは線分を見ていないときでも起こるし、他の角度を見ているときや安静時にも起こる。

被験者には何を測定しているのかを知らせることなく、この脳内情報を解読して、30度の線分に対応するニューロン活動があれば、いまはよい状態、そうでなければ悪い状態であることを知らせる。

被験者は何がよいのか、何を基準としているのかはまったくわからない。それでも、このように状態のよい・悪いを知らせることで、この被験者の30度の線分に対する検出の感度がわずかとはいえ上がり、これが何週間も保持される。脳の回路のシナプス結合に変化が起こり、ダイナミックスの特性が変わったといってもよい。脳への介入である。(p.222)

心を操作することも可能になる

脳は驚くほどの可塑性があり、脳内のシナプス結合は常時変えられる。…そこで、脳の情報を解読し、その状態が何に対応する[反応している]のか、その[状態にあることの]良し悪しを[実験者が]決めてフィードバックすれば、[被験者の]脳はその方向に[シナプス]結合を変えていくというわけである。…これだと、何をフィードバックしたのかが本人にわからないうちに、特定の情報に適合するように脳を改変できることになる。

…女性の顔写真を何枚か準備して被験者に見せたとしよう。被験者は、写真を見てどの女性が好きであるかを答える必要はない。ただ、実験者がある女性の顔を見たときに被験者に起こる脳内活動をよい状態であると、仮に決める。そして被験者の脳内にこのパターンが起こるたびに、これを好ましい状態として、いま何を見ているかには関係なくフィードバックしていく。
すると、被験者には何もわからないうちに、実験者が決めた特定の女性に対する好感度が上がり、これがある期間保持される。つまり、誰かを好きになるという感情を、本人が知らないうちに操作できてしまうのだ。(p.223)

Saturday, September 28, 2019

白石拓 『透明人間になる方法』

 -- スーパーテクノロジーに挑む
Shiraishi, T. (2012). Tōmei ningen ni naru hōhō: Sūpā tekunorojī ni idomu. Tōkyō: PHP Kenkyūjo. 

念じてコンピュータを操作

二〇〇九年にはホンダのロボットASIMOを脳で念じて動かす実験に成功した。…「近赤外光脳計測装置(NIRS)」と脳波計測の二つを併用して、被験者の脳神経活動の読み取りを強化した。NIRSは、近赤外線を頭蓋から照らし、脳に当たって反射する光を捕らえて、脳血流の変化を計測する装置である。
被験者はまず「右手」「左手」「足」「舌」の単語について、それぞれ自分のイメージを思い浮かべる練習をする。…そして、そのときの神経活動データを蓄積し、計測データから単語を特定するアルゴリズムを構築した。こうした結果、被験者が「左手」(のイメージ)を思い浮かべただけで、ASIMOが左手を上げる動作をすることに成功した。(p.p.40-41)

脳リーディングを利用した犯罪捜査

たとえば、被験者を尋問する際、犯人しか知り得ない事実や写真を提示すると、被疑者がもしそれを知っていればP300という事象関連電位[脳波]が発生する。P300の発生も不随意で、被疑者が「知らない」と答えても記憶と合致すると必ず出るのでウソをつくことができないのだ。(p.49)

脳内の映像を読み取るfMRIと認識パターン


さらに二〇一一年、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の西本伸志研究員らのチームが、やはりfMRIを使って、映画の予告編を見ている被験者の脳活動を読み取り、ぼんやりとした映像ではあるものの、動画の再生に成功した。…この技術を使えば、人が見ている夢や空想していることをディスプレイに映し出すことも不可能ではない。脳リーディングの技術は確実に進歩している。(p.53)

Saturday, March 2, 2019

吉田守男『日本の古都はなぜ空襲を免れたか』

Yoshida, M. (2002). Nihon no koto wa naze kūshū o manugaretaka.

[History of Mass Mindcontrol with Stockholm Syndrome]


 古都に空襲がなかったのは、その文化財を保護するためにアメリカ軍が爆撃を控えていたからであり、そのことを進言した“古都の恩人”はウォーナー博士であるという、≪ウォ―ナー伝説≫は全く事実無根であった。(p.209)


 米軍による爆撃によって焼失した日本の文化財は、国宝二九三件、史蹟名勝天然記念物四四件、重要美術品一四三件であり、合計四七一件もが灰になったという。(p.66) …都市地域を攻撃する際の米軍がとった戦法は、おもに精密爆撃とジェノサイド(genocide 大量虐殺の意)爆撃という二つに区分することができる。
…第二・第三期の都市爆撃で主要な戦法としてとられたこの焼夷弾爆撃は、住宅密集地域への無差別爆撃であり、民間人の皆殺しをも企図したものであった。まさにジェノサイド爆撃と呼ぶにふさわしい、すさまじい空爆となったのである。(p.p.103-104))



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 "原爆の攻撃目標[*京都・広島・新潟など]はワシントンからの秘密指令によって他のいかなる形式の攻撃からも一切除外されていて、原爆の使用に対する効果だけを得られるほとんど無傷の地域であった"〔USSBS, Final Report No.66 : The Strategic Air Operation of Very Heavy Bombardment in the War against Japan, 1946〕(p.97)


  京都の場合、梅小路機関車庫[現・鉄道博物館付近]がその照準点とされていたのである。 [*目標が視認しやすく、また原爆の爆風を京都市の住宅密集地域の隅々に行き渡らせ、できるだけ多数の京都市民を殺害できるため。] …もしここに原爆が投下された場合、六〇万人もの死傷者の出ることが推計されている。(p.94)

[*昭和二〇年八月二四日に予定された]三発目の原爆は投下される寸前まできていた。…[*パンプキン爆弾と呼ばれる原爆と同重量の通常炸薬爆弾で]京都への投下練習が着々と積み重ねられていた。このような状態で戦争が終結した結果、京都は爆撃禁止の状態におかれつづけたため、結果として、本格的な空襲がないという結果を生み出したのが真相だったのである。(p.205)


〈マンハッタン計画〉の総指揮官グローブズはその回顧録で次のように書いている。
“…もし、われわれが京都を原爆目標として勧告していなかったならば…[*原爆の代わりに通常爆撃によって]戦争が終わるまでには、全滅しないまでもかならずや、さんざんな損害を受けていただろうということはいえるだろう。”


…大都市の爆撃では二〇〇~三〇〇機のB29が一時間以上もかけて爆撃をする。その場合、あとから来たB29にとって、目標とされた地域がすでに先行機の爆撃で火の海となっていることはよくあることである。その際、火の海に爆弾を棄ててもしかたがないので、そのB29は、帰路において適当と思われる目標物を見出して投弾するか、また、文字どおり爆弾を棄てたりするのである。


 京都に関して…〈爆撃禁止命令〉‥の期間にあった六月二六日の西陣出水に対する爆撃は、B29一機が一トン爆弾七発を投下したものだが、これは当日の名古屋地方への爆撃の[*余った爆弾を棄てるための]付随的爆撃であると考えられる。(p.p.110-112)
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 モニカ・ブラウが著した『検閲』という書物は…次のように記している。
 “日本人のあいだでの情報のやりとりを統制、監視する付加的な手段として、アメリカの宣伝をはかる特別の一局が設けられた。これは「民間情報教育局」(CIE)とよばれた。この機関は、「日本人の思考を改造…する」ために、日本の新聞、ラジオ、学校、教会、およびあらゆる種類の組織を活用することをめざしていた”
 また、CIEは教育映画を無料で配給して、学校・公民館・PTA・青年会・労働組合・農業協同組合などで上映させた。そのために、一六ミリ映写機も無料で貸し出された。


 CIEの前身は、太平洋戦争において「ラッカサン・ニュース」などで活躍した米軍の〈心理作戦課〉であった。…つまり対日心理作戦の専門部隊であった。そして、CIEの局長であるダイク准将も、《ウォーナー伝説》の創作者ヘンダーソン中佐も、共に対日心理作戦に従事した専門家だったのである。

 つまり、CCD[*民間検閲支援隊]が検閲を通して、原爆報道などアメリカの悪いイメージの流布を阻止することを任務としていたのに対して、CIEの任務は宣伝によって、日本軍国主義の批判やアメリカのよいイメージの普及をはかることにあったのである。(p.p.227-229)
原爆投下の真実 「第一目標 京都、19発投下」 予定であった。

Wednesday, January 30, 2019

中野信子『サイコパス』

Nakano, N. (2016). Psychopaths 臨床心理学者スコット・リリエンフェルド、法心理学者スティーブン・ルーベンサー、心理学者トマス・ファシンバウアーらの分析によれば、ジョン・F・ケネディやビル・クリントンをはじめ、何人もの歴代アメリカ大統領が顕著なサイコパス特性を示しています。(p114)


ヴァンダービルト大学のジョシュア・バックホルツの2010年の報告では、サイコパスの特性はドーパミンの大量放出と相関している、とされています。
…ドーパミンが多ければ多いほど、人間が報酬を求める欲動は、大きくなると考えれば、その形質をつかさどる遺伝子の存在によって、サイコパスが強烈な刺激を求め、中毒のように連続殺人をする……という説明が成り立つかもしれません。(p.140)


生物として見た場合、もともと人間は、個体としてはそれほど強い種ではありません。多種の生物と比べると、逃げ足も速くなく、肉体的にも脆弱です。そこで集団をつくり、社会性を持つという工夫をして、発展してきた種です。…そのさい、親子で愛着を形成し、仲間を大事にするなどして、集団を維持した方が、生存と繁殖のためには都合がよかったのです。…今日でも多くの人間が「裏切り」や集団の秩序を壊そうとする働きに対して敏感に反応[バッシング]します。(p.p163-165)


サイコパスは状況がどれだけ混乱していても…皆が自信を喪失している状況でも、自信満々にふるまいます。それを評価する人は多いでしょう。こうしたサイコパスの特性を考えると、面接ばかりを重視した採用試験や大学のAO入試には、問題があると言わざるをえません。過剰に魅力的で、確信をもって堂々とした話しぶりをするサイコパスばかりが通る試験になりかねないからです。
同様に、司法の素人に判断させる裁判員制度も、弁舌に長けたサイコパスの存在を考えると、危険きわまりない司法制度だといえるでしょう。(p.186)

女性のサイコパスは「弱い女」「涙を流す女」を攻撃できないという社会通念を利用し、批判する人間がまるで極悪人のように見えるアングルを演出することに長けています。(p.194)

アメリカの産業心理学者ポール・バビアクによれば…「出世した人間にはサイコパスが多い」ことがわかっています。ということは、サイコパスは仕事ができるのでは?と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。…相手が喜ぶことを言って巧みに心理を操る、あるいは逆に相手の弱みを見つけて揺さぶる……そうした話術は得意中の得意です。
…一方、サイコパスは…誠実さを欠き、批判されてもピンときません。だから平気で仕事を先延ばしにしたり、約束を破ったりしてしまいます。衝動性が高いため、几帳面さを求められる仕事や、協調性や忍耐が求められるチームワークが苦手です。しゃべりは得意で存在感はあるのですが、よくよく精査してみると、意外と業績は低いことも少なくありません。
つまり口ばかりうまくて、地道な仕事はできないタイプが多いというわけです。(p.p.182-183)

たとえばアップルコンピュータ(現在のアップル)の共同創設者の一人、スティーブ・ジョブズは、世界で最も洗練された勝ち組サイコパスだったのではないかと考えられます。彼は卓越したコンピュータの知識があるわけでもなく、デザインその他の実務的なビジネススキルさえも持ち合わせていませんでしたが、天才的なプレゼントとネゴシエーションの才能によって全世界の人びとを虜にした人物でした。…一方で、アップルの元・技術者や妻子に対する容赦ないふるまい、追い詰め方は相当なものだったことが知られています。利用できると感じた人間には「すばらしい」と言ってすり寄り、しかし、利用し終わった人間や対立した相手に対しては舌鋒鋭く攻撃し、その時々で付き合う人間をどんどん変え、古い知り合いを切り捨てていきました。(p.184)


サイコパスの多い職業トップ10


1位 企業の最高経営責任者
2位 弁護士
3位 マスコミ、報道関係(テレビ/ラジオ)
4位 セールス
5位 外科医
6位 ジャーナリスト
7位 警官
8位 聖職者
9位 シェフ
10位 公務員
[ケヴィン・ダットンの調査 p.225]


Friday, November 16, 2018

『闇に魅入られた科学者たち:人体実験は何を生んだのか』

Nihon Hoso Kyokai. (2018). Yami ni mirareta kagakushatachi: Jintai jikken wa nani o unda noka. Enueichikeshuppan. 

 アブグレイブ捕虜虐待事件から11年後の二〇一五年の春、ニューヨーク・タイムズ紙や非営利放送局デモクラシー・ナウ!が驚くべき内容のメールをスクープした。アメリカ心理学会と、CIAや軍とのやりとりである。倫理に関する方針変更について…CIAや国防総省の意向を汲んだものだった。心理学会が組織的にCIAや軍と深く結びつき、主体的に尋問に関与していたことが白日のもとにさらされたのだ。
 同年七月、アメリカ心理学会はようやく、「尋問への関与」と「その事実の隠蔽」を認め、謝罪した。学会の中枢を担ってきた幹部は辞任。p.p.216-217