岸田秀, 1933-, author, Kishida Shū., & Kishida, S. (2024). ものぐさ精神分析 (Zōho shinpan). Chūō Kōron Shinsha.
たとえば、アメリカの独立宣言に表明されている自由、平等、民主の共同幻想の背後には、アメリカ大陸の「発見」当時に北米に一〇〇万はいたと推定される原住民が二〇万を下回るに至った大量虐殺の経験があった。アメリカの共同幻想はこの経験の抑圧と正当化に支えられている。そのため、アメリカの共同幻想は硬直化し、この共同幻想にその私的幻想を共同化しようとする成員(アメリカ国民)に安定感と確実感を与えるものではなくなっている。どこかうしろめたく、うさんくさいのである。またそのため、抑圧し正当化したもとの経験に類似した経験に関して、アメリカ国民の精神構造に盲点が生じ、類似の経験が強迫的に反復されるようになる。
したがって、アメリカは、その不確実感、不安定感を補うため、他民族にその共同幻想を押しつけ、またときには他民族を大量虐殺するよう強迫的にかり立てられている。広島、長崎への原爆投下、ベトナムにおける大量虐殺は、インディアンの大量虐殺の経験の強迫的反復である。(p.p.8-69)
…アメリカが他民族の大量虐殺というその反復強迫をやめるようになるためには、原住民の大量虐殺の経験を正当化するのをやめなければならない。これは大変なことである。それは、欺瞞と暴力で奪った土地を原住民に返すことを意味し、さらに、自由、平等、民主のその共同幻想が偽りに過ぎなかったと認めることを意味する。これはアメリカ国家の基盤を崩すことである。しかし、この正当化をやめないかぎり、今後もアメリカは、チャンスと口実さえああれば、どこかの民族を大量虐殺するであろう。(p.p.70-71)
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