Wednesday, September 4, 2024

伊藤祐靖 『自衛隊失格』

  Itō Sukeyasu, & Itō, S. (2021). 自衛隊失格 : 私が「特殊部隊」を去った理由. 新潮社.

拉致船との遭遇

確認すると「第二大和丸」と書いてあり、早朝にP3Cから[偽装工作船であるとの〕連絡が来た船名だった。そして完全に回り込み、漁船の真後ろについて船尾を見ると、漁船の船尾に縦の線が入っていた。

それは船尾が観音開きで開く構造になっていることを示している。そこから小舟(工作船)を出せるということである。

これこそが日本人を拉致し、北朝鮮に連れ去っていった「拉致船」なのだ。

…海上保安庁と連絡がつき、新潟から高速巡視船が追ってくることになった。それまでの間は写真撮影をしたり、船体の特徴を報告したりしつつ、工作母船の位置情報も送っていた。

(p.203)


帰投する巡視船

日没直前の18時頃になってようやく、巡視船が追いついてきた。 相手は拉致船、北朝鮮の高度な軍事訓練を受けた工作員が多数乗っている。密輸や密漁をしている船とはレベルの違う抵抗をすることは目に見えているのに、いつも通りに海上保安官たちは飛び移ろうとしていた。そしてまさに飛び移ろうとした瞬間、それまで12ノット(時速20キロ)程度の航行だった工作母船は大量の黒煙を吹き出しながら増速し、最終的には34ノット(時速60キロ)まで上げた。

…「みょうこう」にとっては、まだ余裕のあるスピードだったが、巡視船の方は工作母船に少しずつ離されていった。しばらくすると、巡視船から無線連絡が入った。

「護衛艦みょうこう、こちらは巡視船○○○。ただ今から威嚇射撃を行います」

すると、「パラパラパラ」と、上空に向かって小さな口径の弾をばらまく射撃が行われた。

これは試射で、今から本射が始まり、工作母船の船体付近に威嚇射撃を開始するのだと私は思っていた。だが、いつまで経っても本射は開始されず、巡視船は再び「みょうこう」を無線で呼び出してきた。

「護衛艦みょうこう、こちらは巡視船○○○です。威嚇射撃終了」

えっ、あの上に向かって撃ったのが威嚇射撃? 『天才バカボン』のおまわりさんじゃあるまいし、あれが威嚇のつもりだったのか? さらに無線連絡が入ってきた。

「本船、新潟に帰投する燃料に不安があるため、これにて新潟に帰投します。ご協力ありがとうございました。」

…航空機ならまだしも、燃料がなくなったところで沈むわけではないのに、日本人が連れ去られている真っ最中の可能性が高いというのに、その工作船に背を向けて帰投するというのだ。…そうして本当に、巡視船は進路を南に向けて帰投してしまった。

(p,p.205-207)

海上警備行動の発令

突然、けたたましいアラームが鳴り出した。「カーン、カーン、カーン、カーン」 アラームは、全乗員を戦闘配置につけるためのものである。再び副長の声が響いた。

「海上警備行動が発令された。総員、戦闘配置につけ。準備でき次第、警告射撃を行う。射撃関係員集合、CIC(戦闘行動をコントロールする中枢部)、立入検査隊員集合、食堂」

(p.209)


突然止まった工作母船

艦長は、目をカッと見開くと、押し殺したような低い声で戦闘号令を発した。「戦闘、右砲戦! 同航のエコー〈E〉目標!」(このときは工作船をEと呼んだ) いよいよ訓練ではない射撃が開始されてしまった。

…初弾は依然として34ノットで進む工作母船の後方200メートルに着弾させたが、工作母船に減速する兆候はまったく見られなかった。前方200、後方100、前方100と弾着点を工作母船に近づけていった。工作母船を木っ端みじんにしてしまうギリギリの距離まで弾着点を近づけて、何十発も警告射撃を行った。だが、工作母船は減速の兆候をまったく見せなかった。

…それは本当にギリギリで、ちょっとでもどこかにミスがあれば、乗っているかもしれない拉致された日本人ごと木っ端みじんにしてしまうからである。その思いが通じたはずは絶対にないが、工作母船は突然、停止した。

(p.210-211)

総員戦闘配置につけ

もともと海軍の仕事は船の沈め合いがすべてだったが、90年代から武器による抵抗が予想される船舶に乗り込んで、積み荷の検査をしようという考えが世界的に広まり始めた。海上自衛隊もその流れに乗る形で研究を開始し、各艦にその資料を配付し始めた時期だった。だからまだ、艦内には防弾チョッキさえも配備されていなかった。訓練さえもできる状況ではなかったのである。それなのにいきなり北朝鮮の工作母船に乗り込め、というのだ。

…「海上警備行動が発令された。総員戦闘配置につけ」という副長の艦内放送の声で、立入検査隊員たちは食堂に集まってはいた。

(p.p.212-213)


命令が間違っているという確信

…10分前とは、まったく別人になっていた。悲壮感のかけらもなく、清々しく、自信に満ちて、どこか余裕さえ感じさせる。私は、彼らに見とれてしまっていた。半世紀以上前に特攻隊で飛び立って行った先輩たちも、きっとこの表情で行ったに違いない。

…「これが覚悟というものなのか」と納得しつつも、心の奥底では気づいていた。この表情は覚悟だけではないのだ。“わたくし”というものを捨て切った者だけができる表情なのだ。彼らは、短い時間のうちに出撃を覚悟し、抱いていた希望や夢をあきらめた。そして、最後の最後に残った彼らの願いは、公への奉仕だった。それは育った環境や教育によるものではなく、ごく自然に、自らを滅することに意義を感じ、奉仕を全うしようとする清々しい姿勢だ。

だから、そんな彼らを“わたくし”のためにばかり生きているように見える政治家なんぞの命令で行かせたくないと思った。

(p.216)


忘れられない3つのこと

一つ目は、燃料に不安があるからと、海上保安庁の巡視船が日本人を連れ去っている真っ最中かもしれない工作母船に背を向けて帰投してしまったことである。[...]

二つ目は、[停船した工作母船へ]「立入検査」の命令が出たことと、それがそのまま末端の隊員に伝わったことである。…私は、任務が絶対達成できないことも立入検査隊員が全員死亡することもわかっていた。…[主に幹部用である]拳銃を触ったこともない者が、夜間、自爆装置がセットされている北朝鮮の工作母船に乗り込んで、北朝鮮の工作員と銃撃戦の末に日本人を救出してくることは絶対に不可能で、彼らが全滅することも確実だった。

それは、私が「みょうこう」航海長で、教育訓練係士官として乗組員の練度をよくわかっていたからではなく、海上自衛隊の艦艇乗りなら誰でも知っていたことである。

ということは、「立入検査を実施させる」という政治決定がなされる時に、現職の海上自衛官に任務達成の見積もりと生還の可能性を確認せずに決定がなされるはずがないので、現状を知っていながら可能だと言った海上自衛官がいるか、不可能という現状を理解したうえで実施させるという政治決断がなされたのか、そのどちらかなのである――。

(p.p.220-222)

愚直なまでに命令に従う

あの命令が間違っていたとか、取り消すように動くべきだったということではなく、いったいなぜ任務を達成できず、全滅するとわかっているのに彼らを行かすと決めたのか。その理由を確認して、彼らに伝えるべきだった。そんな当たり前のことをせずに命令に愚直に従おう、従わせようとしたのである。これは、私が一生恥じていかなければならないことだ。

そして、決して忘れられない三つ目は、それでも彼らは工作母船に乗りこもうとしたことである。(p.223)


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20歳前後ですでに「中年自衛官」

中年以降の典型的な自衛官とは、目指していると思っていることと、実際に目指していることの間に大きなギャップがある人のこと、加えて、それに気づいているのか、気づいていないのか微妙な人たちを指す。

例えば、自衛隊員が射撃訓練をする時の目的は、射撃制度の向上である。しかし自衛隊ではいつの間にか、怪我人を出さないとか、薬莢を紛失しないとか、時間内に終了させるとかいった方を重要視してしまう。それらも大切なことではあるが、問題なのはそのせいで射撃制度の向上がないがしろになってしまうことだ。

気づいているか微妙というのは、当初はそのことに気づいていながら気づいていないふりをしているうちに、本当に気づかなくなってしまうからである。若いうちは入隊時の志や思い入れがあるため、有事を想定した能力の向上に努めようとする。が、年月を積むにつれ、徐々に組織が抱える矛盾や本来の目的に背を向け、安定した日常の維持を優先するようになる。見て見ぬふりをし続けると、本当に見ることができなくなってしまう。

(p.p.165-166)

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若者は成長する。防大生は磨けば光る。光らないのは大人のせいだ。我々指導官の教えざる罪だ。

(p.176)

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[防衛大] 離任の辞

我々の職業は究極のボランティアだ。知らない奴のために自分が死ななきゃならない。人を殺さなきゃならない。敵ばかりじゃない。部下も殺さなきゃならない。「ガタガタ言わずに死んでこい」と言わなきゃならない時もある。しかも、ボランティアである以上見返りも求めてはいけない。「国民に感謝されたい」などと、せこいこと考えちゃいけねえよ。どう思われたっていいじゃないか、その人達のためになるなら。

ところで軍人らしさってなんだ。‥‥任務達成のためにすべてのことをあきらめることが軍人らしさだ。…何の見返りもなく、任務達成を目指す。これが軍人らしさだ。

(p.188)

Sunday, June 16, 2024

SILENT WEAPONS: EXAMINING FOREIGN ANOMALOUS HEALTH INCIDENTS TARGETING AMERICANS IN THE HOMELAND

[沈黙の凶器:アメリカの国民を標的にした国外勢力による特異な健康被害事例に関する調査]

Homeland Security Committee | Republican

U.S. House of Representatives

H2-176 Ford House Office Building

Washington, DC 20515




What: A Subcommittee on Counterterrorism, Law Enforcement, and Intelligence hearing entitled, “Silent Weapons: Examining Foreign Anomalous Health Incidents Targeting Americans in the Homeland and Abroad.”

When: Wednesday, May 8, 2024, at 2:00 PM ET

Where: 310 Cannon House Office Building

 https://homeland.house.gov/hearing/silent-weapons-examining-foreign-anomalous-health-incidents-targeting-americans-in-the-homeland/

Sunday, March 24, 2024

西田公昭 『マインド・コントロールの仕組み』

 西田公昭監修. (2023). マインド・コントロールの仕組み. カンゼン.


一般的に人が意思決定を下す際には、トップダウン情報とボトムアップ情報のふたつの情報処理を行っています。…マインド・コントロールが操作するのは、まさにこの情報部分で、意図的に都合のいい情報のみを与えることで相手の思考を操作し、自発的にこちらが望む通りの決定を引き出せます。(p.10)

マインド・コントロールの大きな特徴は、相手に悟られることなく、その思考や行動を操ることができる点にあります。したがって、マインド・コントロールの支配下に置かれた本人には、自分の心が操作されているという自覚がありません。…一度その支配下に置かれると抜け出すことは容易ではありません。

(p.8)

完全に支配下に置かれた場合、財産を騙し取られるといった被害者になるだけでなく、支配者に命じられるまま犯罪行為に及んでしまうことすらあります。…殺人やテロは言うまでもなく「悪」と呼べる行為です。しかし、[オウム真理教]信者たちは、マインド・コントロールによって、それが「正しいこと」だと信じ込まされた結果、通常であれば絶対に行わないであろう凶悪な犯罪に手を染めることになりました。

(p.9)

オウム真理教のマインド・コントロールの手口

信者は、リーダーである麻原を絶対的に崇拝します。その麻原が、犯罪行為を正当化するような教えを説いたのです。たとえば、法律上は殺人となるような罪を犯したとしても、それは今の社会が目覚めていないからで、真に覚醒したレベルから見れば、その人は救済されたのだというような具合です。(p.144)


マインドコントロールと殺人・遺棄致死事件

「信頼関係を築いて相手の弱みを握る」

「人間関係を破壊し孤立させる」

「共犯関係の構築による罪の意識の植えつけ」

「情報操作によって恐怖心をあおる」

(p.117)

尼崎連続殺人・傷害事件

美代子が家族を支配するために用いたのが、相手の弱みにつけ込んで、分断させる手法です。当時高校生だった少女は、かねてから「母や姉は私のことを見下しているのではないかという劣等感を持っていました。美代子はそうした少女のコンプレックスにつけ込み、自分は少女の味方であると思わせる一方で、暴力で母親を追いつめ、少女の前で「いらない子だった」と言わせるなどして、少女と母親の絆を完全に断ち切ります。

これ以降、少女は家族よりも美代子のほうを慕うようになり、母親や姉に対しても虐待を行うようになるなど、完全にマインド・コントロールされた状態になります(少女の母親と姉は激しい暴行や虐待によって、のちに死亡)。

(p.115)


たとえば、ある人が多額の献金をしたとして、それが本当に「本人の自由意志とみなせるもの」なのか、それとも「マインド・コントロールされた結果なのか」を客観的に判断することは、なかなか難しいわけです。…一方で相手を支配してやろうとするマインド・コントロールの”行為”については、比較的わかりやすい。ですから、そこについての規制はかけられるのではないかと思っています。…これは個人の合理的な意思決定を妨害する行為、つまりその人の尊厳や基本的な人権を侵害する行為ではないのかという議論に持っていけるとは考えていて、そうした法的規制を議論していくことが、将来的な被害を減らすという意味でも今後取り組むべき課題であると思っています。(p.46)

マインド・コントロールから身を守る10の方法

(1)つねに誠実でなくてもよい。


(2)相手の誘いを断ってもいい。


(3)答えをすぐに出さなくてもいい。


(4)知らないことを恥じなくていい。


(5)難しい問題には正解はないと心得る。


(6)すぐに親しくなろうとする相手に注意する。


(7)おかしいと感じたら全力でその場から逃げ出す。


(8)他人に依存しないで自分で考える。


(9)従うことに慣れてはいけない。


(10)できる限り情報を集める。


Monday, November 27, 2023

内海聡 『テレビが報じない精神科のこわい話』

 内海 聡 & くらもと えいる. (2018). テレビが報じない精神科のこわい話 : まんがで簡単にわかる! : 新・精神科は今日も やりたい放題. ユサブル.

「薬の服用後なぜか死にたくなった どうして飛び降りたか覚えていない そんな証言が自殺からの生存者たちから寄せられたんです」
[遺族への聞き取り調査で]対象となった1016人の自殺者のうち、精神科を受診・治療中だった人は701人で、69.0%を占めました。さらに08年1月以降では883人のうち632人と、71.6%にのぼっています。そのうち自宅マンションから飛び降り自殺を図ったケースでは100%、つまり全員が向精神薬を服用していました。
…抗うつ剤と覚醒剤は類似物質なのですから、飛び降りたいという衝動に駆られるのも、まったく不思議なことではないのです。(p.p.56)


精神医学は適当な理論で成り立っている
科学的根拠のない精神医学

今ある疾患理論、薬物理論というのは現在でも全て仮説であり、説明されたり因果関係を導けたりするものが何ひとつないのです。
…内科や外科など、他の分野の病気であれば、その診断基準に、科学的、数値的な根拠が必ず存在します。しかし精神医学にはそれがないのです。
(p.p.77-78)

「売りたい薬 売りたい人間 その薬を処方して じわじわ薬を増やして 長く通わせて儲けたい人間 その集大成が精神科医療だと私は思っています」
ここで重要なポイントは、本人が自殺目的で大量服用したのではない、ということです。…主治医の精神科処方を守り、決められた通りに飲んでいたら不審死に至ってしまったということなのです。…これほど危険であるにもかかわらず、製薬会社と精神科医が儲けるために精神薬は使われ続けています。(p.p.79-80)


医療保護入院での恐怖体験!

Q. 医療保護入院って何?
A. 自傷・他害の恐れがない精神障害者でも、病院判断、家族の同意があれば強制入院させられる制度です。

精神障害と判断する基準があいまいなため家族間のトラブルの時に悪用されることが多々あり
(p.105)
[被害者の証言]
裁判では[強制入院させた]あの医師が統合失調症の判断基準も知らずに今まで数千人以上の人を診察診断してたのを知った時には、怒りで震えました
(p.121)


製薬会社と権力者の繋がり

世界有数の巨大製薬会社であるグラクソスミスクライン(GSK)が販売した「パキシル」という薬は1992年の発売以来、依存症に関して3200件、出生異常で600件以上、自殺と自殺未遂でも約450件の訴訟をおこされています。

その中の、ある裁判において、「マイナスの研究結果は隠蔽する」と記述されたGSK重役によるメモが明らかにされました。それとは別の裁判でも同社重役の「ダメでも結果は隠せる」と記述したメモが冒頭陳述で読みあげられてます。

また、2017年の製薬会社の売上高で世界第2位のファイザー社も、同社が販売する「ガパペンチン」(てんかん薬)のマーケット拡大に不都合な研究結果のもみ消しや改ざんを行っていたことを示す社内文書がみつかっています。(p.p.197-196)

Thursday, October 12, 2023

Ana Beatriz 『あなたの日常に潜む、異常人格者 サイコパシー』

 Silva Ana Beatriz Barbosa and 宮城 ジョージ. サイコパシー = Psychopathy : あなたの日常に潜む 異常人格者 : 現代社会に野放しにされた捕食者たちよ. ヒカルランド 2016.

権力を奪い取るための5つの計画とは?

計画その1 会社に入る

計画その2 現場をじっくりと観察する

計画その3 周りの人と事実をマニピュレート(操作)する

計画その4 不必要な人を切り捨てる

スーツとネクタイ(昇進)を手にしたサイコパシーは、ここまでたどり着くのに利用していた人を切り捨てる。目標が達成されればもう用はないからである。自分の獲物が何も言えないようにするために弱みを握り、歯向かえば恥をさらすと脅すのである。そのためサイコパシーに利用された人ほど、その事実について触れたがらない傾向が強い。


計画その5 権力を奪い取る


(p.p.124-127)

Thursday, June 8, 2023

青山透子『日航123便墜落事件 JAL裁判』

 青山透子. Jal裁判 : 日航123便墜落事件. Tōkyō: 河出書房新社; 2022.

一九八五年八月一二日に墜落した日航123便のボイスレコーダーとフライトレコーダーは、八月一四日に墜落現場の群馬県上野村御巣鷹の尾根山腹斜面下五〇〇メートルの沢で発見された。そしてその日の深夜、午前零時半に設置された運輸省(当時)事故調査委員会事務局で保管された。当日の記者会見において、再生装置や特殊電源が必要であるため、解析開始は一六日以降になると発表された。ところが未解析であるにもかかわらず、『毎日新聞』(一六日付)が後部圧力隔壁破壊説という飛ばし記事を出した。その直後にボーイング社はそれを否定し、日本航空も社内で独自にコンピュータによる解析を行った。その結果を受けて一九日に河野宏明整備部長が科学的根拠に基づき、「何らかの外力で垂直尾翼が折れ、それに伴い隔壁が傷ついた可能性」を記者会見で発表した。この時すでに、後に発表された事故調査報告書の付録研究資料に書かれている「異常外力の着力点」の存在を日本航空が示唆していたことになる。


 ところが、日本航空が外的要因の可能性を発表した翌日、運輸省の大島航空局技術部長が、圧力隔壁に重大な絡みがあると、何の根拠もないまま発言している。まだボイスレコーダーやフライトレコーダーが解析途中であり、この発言には政府側がもっていきたい方向性が表れている。しかしこれも次の日、現場で実際に出向いて調査を行っている事故調査委員の「隔壁に大きな穴はなかった」という発言で否定されている。いずれも各社新聞報道に明確に書かれている。(p.p.76-77)


現物のボイスレコーダーに基づいて作成されたはずの事故調査報告書では、聴き取り不能という理由で意味不明の箇所が随所にあり、果たして聴き取りにくいほどの雑音が入っているのか、または航空自衛隊が分析と称して、後から加えた雑音なのではないだろうか、という疑念が存在する。なぜならばいくら損傷が激しいといっても、その心臓部にある録音テープは、耐熱や耐衝撃構造のカプセルに収納されており、1100度の温度で三〇分間、1000Gの衝撃に0.011秒耐え、海水、ジェット燃料の中に48時間おかれたとしても浸らないのである。従って、過去様々な航空機事故のボイスレコーダーは、日航123便よりも苛酷な状況下にあったものも多数あったが、それでも突然会話の途中に雑音が入ることはなく、日航123便のボイスレコーダーだけが雑音が多いというのはそもそも不自然である。操縦士たちの会話の背景音も一定のままずっと継続した音が録音されているのが通常だ。

 ...特に、当該飛行機を操縦していた自衛隊出身の高浜機長の会話に、全体の流れから考えても不明な部分が多く見られる。不都合な部分を雑音で聴き取れないよう意図的に作成したものを公表して、世間に知られたくない会話を隠していると言われても仕方がない。


日航123便墜落事件以降は、[日本航空幹部候補生の新入社員教育として]この自衛隊への入隊研修が突然行われなくなった、という。...驚くべきことに毎年続いてきたこの訓練がなくなったきっかけが、日航123便であるというのだ。

 その時の新入社員の教育担当者から出た言葉は、きくところによれば「日航123便墜落は自衛隊がやったのである。だから今後、自衛隊体験教育は行わない」という衝撃の事実であったそうだ。

(p.80)


結局のところボーイング社の売り上げは、1985年に過去最高となって、最高益を上げた、...『日本経済新聞』には、大量の死者が出ても最高益、という皮肉な見出しの記事が掲載された。一方、日本航空は、一時的に株価が暴落したが、政府が所有する株式放出と民営化の思惑によって、こちらも株価が1985年度末に最高値となっている。(p.84)

それにしても、どこに修理ミスを犯した会社の軍用機や民間機を大量に購入する国があるだろうか。しかも、日本政府は、ANAにまでボーイング社を購入するように働きかけた。

(p.83)

Wednesday, May 24, 2023

青山透子『日航123便 墜落の波紋』

 青山透子 author. 日航123便墜落の波紋 : そして法廷へ. Tōkyō: 河出書房新社; 2019.

[英国での会議で]私が指摘した主な疑問点は次の通りである。

1. 検死担当医師が示した客観的所見によれば、遺体が二度焼かれているということ

2. 炭化状態が著しい遺体が三分の一ほどあり、通常では考えられないほど骨の芯まで焼かれていること

3.目撃情報が書かれていない事故調査報告書の内容と実際の目撃者の目撃情報に整合性がないこと

   [...]

4.  目撃者が多数いるファントム2機をいち早く墜落前に飛ばし、日が沈む前のまだ十分明るいうちに墜落場所まで日航機と一緒に飛行していたこと、墜落まで見届けて場所を特定した自衛隊はお手柄であって、何らそのファントム機を墜落前に飛ばしたことを隠す必要がない。… (p.75)



当時の事故調査委員長(武田峻氏)は、十名の遺族に海底捜査を早急に行うように詰め寄られた際に、

「あのですね、お金がないというせいではないのですよ。お金の問題じゃない。海底から事故調査結果と違うものが引き上げられたら困るからですよ」と叫んで、居直ったそうだ。そのことを当時のその場にいた遺族から伺ったのである。事故調査委員長のその一言があまりに想定外であったので皆が唖然として凍りついてしまったという。

(p.p.78-79)



遺族の吉備素子氏(『墜落の新事実』第二章参照)に詳細なインタビューを行った時、

①なぜ、日本航空社長(高木養根氏)は自分と面談した際に「(首相官邸に行けば)殺される」と極度に恐れて動揺していたのか。

②なぜ、事故原因を追究すると米国と戦争になると河村一男氏(群馬県警日航機事故対策本部長〔当時〕)が言ったのか。

③なぜ、その河村氏が県警を辞職して大阪で再就職をし、時折電話をかけてきて、自分を見張っているような口ぶりで自己原因を追究しないよう圧力をかけてきたのか。

最低でもこの三点が彼女の疑問であった。  (p.p.108-109)



御巣鷹山域の通称一本から松に第4エンジンがひっかかり、最後はそれが原因で墜落した、というのが群馬県警の現場検証の結論だが、このから松の存在は米国の調査資料には一切出てこない上、現場検証の結果も書かれていない。

…樹齢二百年と言っても、その根本ではなく、先の細くなっている上の部分に激突というのである。ちなみに、ジャンボジェットのエンジン一基の大きさは全長4メートル、直径3メートル、重さ7トン(普通乗用車七台分)だが、この貧弱な木にひっかかったぐらいで、これほどまでにエンジン側が木端微塵にバラバラになるのか大きな疑問が残る。

この件について工学関係や力学関係の研究者に見せたとき、群馬県警発表のから松の写真を見て大笑いされた。木の側が折れているのだから、力学的にも木のほうが簡単に負けているわけである。頑丈な鉄塔ならばまだしも、木の上部に接触したぐらいで、巨大なエンジンが細切れに跡形もなく、バラバラになる理由が、逆にわからない、とのことだった。当然のことながら、その直後の墜落時に巨大な岩に激突した場所から、他の三つのエンジンはある程度の形をとどめたまま発見されているのである。

事故調査報告書でも、第4エンジンのバラバラ事件について辻褄の合う説明は全くなされていない。

英国でお会いした航空機事故調査の専門家のD氏の言葉が浮かんでくる。

「なんとでも書くのですよ、相手側はね」。本当にそうである。 (p.p.134-136)



…目撃者の証言どおり、2機のファントム機を見た時間を時系列に沿って並べてみると…

18:35 静岡県藤枝市上空 日航123便を追いかけて山の稜線ギリギリの超低空飛行

18:40 群馬県吾妻郡東村上空(群馬県北西部)ファントム2機を自衛隊員が目撃

18:45〜54頃 群馬県上野村の住民、子供たちが日航機とファントム2機を目撃。数分後に2機のファントムが埼玉方面へ向かったのを目撃  


…上野村では赤い飛行機(赤い物体)が目撃されており、赤い閃光や爆音、雷のような音など、多数の爆音と轟音が聞かれている。

現場状況からも、木端微塵の状態になった第4エンジンが、なんらかの武器によって破壊された形跡があるという疑問はぬぐえないのである。 (p.p.140-142)