Thursday, July 3, 2025

吉田敏浩『追跡!謎の日米合同委員会』

 Yoshida, T. (2021). 追跡!謎の日米合同委員会 : 別のかたちで継続された「占領政策」. 每日新聞出版.

一九五七年二月一四日付、駐日アメリカ大使館からアメリカ国務省への極秘報告書「在日米軍基地に関する報告」

行政協定のもとでは、新しい基地についての要件を決める権利も、現存する基地を保持し続ける権利も、米軍の判断にゆだねられている。…多数の米国の諜報活動機関と対敵諜報活動機関の数知れぬ要員がなんの妨げも受けず日本中で活動している。
米軍の部隊、装備、家族なども、地元とのいかなる取り決めもなしに、また地元当局の事前情報連絡さえなしに日本への出入りを自由に行う権限が与えられている。(『日米「密約」外交と人民のたたかい』)
(p.130)

CICとは米陸軍の対敵諜報部隊でCounter Intelligence Corpsの略称である。…日米地位協定の刑事裁判権に関する規定「米軍人・軍属の公務中の犯罪はアメリカ側に第一次裁判権がある」に従って…スパイ活動中のCIC員がたとえ車で日本人をはねて殺傷しても、公務中としてアメリカ側に第一次裁判権があるので、日本側当局に逮捕・起訴されることはなく、日本の裁判所で裁かれることはないのである。

アメリカの情報機関NSA(国家安全保障局)の世界的なインターネット監視・盗聴活動を暴露した、元NSA職員エドワード・スノーデンの告発からも、日米の連携が明らかになった。
…二〇一三年四月八日付の秘密文書には、NSAが防衛省情報本部電波部に「エックスキースコア」など、個人のEメールなど非公開情報まで密かに検索できるインターネット大量監視用の「違法監視プログラム」をも提供し、「これらの監視システムを使いこなし、米国の監視網に貢献するサイバー・スパイを防衛省・自衛隊内に養成する」ための講師を派遣すると記されていた。
自衛隊のほかに…「アメリカの情報機関は警察と公安調査庁に別個のルート」を持って、それぞれ連携している。また、「警察、内調、外務省はいずれも米中央情報局(CIA)との情報交換」をおこなっている。
(p.p.139-140) 

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もく星号遭難事件と米軍の航空管制

一九五二年四月九日、午前七時三四分、日本航空の羽田発大阪経由福岡行き、マーチン202型双発プロペラ機もく星号が、風雨をついて羽田飛行場を飛び立った。しかし、千葉県の館山上空を通過後、離陸から二〇分で行方不明になった。…翌四月一〇日、伊豆大島の三原山噴火口の東側一キロの地に墜落し散乱した機体が発見された。乗組員四名と乗客三三名の全員が死亡していた。
…羽田出発時の米軍管制官の指示は「館山通過後一〇分間高度二〇〇〇フィート」だった。二〇〇〇フィートは約六一〇メートルである。その高度で一〇分も飛べば、海抜七五八メートルの大島三原山に衝突する。もく星号は疑問を呈して問い返した。羽田に駐在するノースウエスト航空の運航係も、この管制指示を傍受していて、その高度では低すぎると抗議した。

…日本政府の事故調査委員会は、米軍にジョンソン基地の航空管制室の録音テープの提出を要請した。しかし米軍は応じず、文書で「六〇〇〇フィートを指示」とだけ回答した。
一方、在日米空軍の機関で航空機と基地の交信を記録する「東京モニター」は、ジョンソン基地からの「館山通過後一〇分間高度二〇〇〇フィート」という指示を傍受していた。だが、米軍側は公式にはあくまでも「六〇〇〇フィートを指示」と押し通した。録音テープの提出を再三の要請にもかかわらず拒み通した。

…そこで注目されるのが、羽田出発時の当初の管制官の指示「館山通過後一〇分間高度二〇〇〇フィート」の背景には、もく星号の飛行予定の方向に、約一〇機の米軍機が飛行中という事情があったことだ。
「もく星」号が羽田を離陸するとき、「東京地区の各飛行場から出発して、同時刻ごろに同じ方向に向かっていた米陸海軍機が十機ほどあった」(『科学朝日』昭和二七年六月号)
(p.p.142-145)

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民間航空機を追尾し急接近する米軍機

一九九七年九月一二日、小松発札幌行き全日空A320旅客機が青森県の陸奥湾上空を高度約六四〇〇メートルで飛行中、米空軍三沢基地のF16戦闘機二機が後方から急接近してくるのが、全日空機の空中衝突防止装置(TCAS)のレーダーによるコンピューター画面に映り、「降下」を指示する警告音が鳴ったので、急降下して衝突を緊急回避した(「朝日新聞」一九九八年一月四日朝刊)。
…パイロットは「まるで標的機を要撃するように追尾しているように感じた」と報告しています。


一九九八年八月には、日航の広島行の便が高度一万七〇〇〇フィートで飛行中に、厚木から岩国に向かっていた海兵隊の戦闘機が急接近、日航機は急降下して衝突を回避した事例、さらに一九九七年一一月には高知県上空で関西空港に向かっていた日航機に米軍戦闘機が急接近、機長の緊急回避操作で空中衝突を免れた事例など、米軍機の異常接近が相次いで報告されました。

二〇〇七年八月八日にシドニー発成田行きのJALWAYSボーイング747旅客機が、グアム島南方上空を高度一万一六〇〇フィートで飛行中、右後方上空から米空軍F15戦闘機二機に追尾され急接近された事件は、米軍側が国際的な飛行規則に違反したことを認め、異例の謝罪をした珍しいケースである。
(p.p.149-151)

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新型コロナウイルスの検疫も米軍まかせ

在日米軍内でも新型コロナウイルスの感染が相次いできたのに、日本政府は米軍関係者(軍人・軍属・それらの家族)の入国禁止措置をとれず、基地から入国する際の検疫も、感染防止策も米軍まかせで、まったく手出しできないのである。
米軍関係者は日米地位協定にもとづき、基地を通じて自由に出入国でき、日本の出入国管理に服さなくてもいいからだ。
(p.172)

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