Wednesday, January 30, 2019

中野信子『サイコパス』

Nakano, N. (2016). Psychopaths 臨床心理学者スコット・リリエンフェルド、法心理学者スティーブン・ルーベンサー、心理学者トマス・ファシンバウアーらの分析によれば、ジョン・F・ケネディやビル・クリントンをはじめ、何人もの歴代アメリカ大統領が顕著なサイコパス特性を示しています。(p114)


ヴァンダービルト大学のジョシュア・バックホルツの2010年の報告では、サイコパスの特性はドーパミンの大量放出と相関している、とされています。
…ドーパミンが多ければ多いほど、人間が報酬を求める欲動は、大きくなると考えれば、その形質をつかさどる遺伝子の存在によって、サイコパスが強烈な刺激を求め、中毒のように連続殺人をする……という説明が成り立つかもしれません。(p.140)


生物として見た場合、もともと人間は、個体としてはそれほど強い種ではありません。多種の生物と比べると、逃げ足も速くなく、肉体的にも脆弱です。そこで集団をつくり、社会性を持つという工夫をして、発展してきた種です。…そのさい、親子で愛着を形成し、仲間を大事にするなどして、集団を維持した方が、生存と繁殖のためには都合がよかったのです。…今日でも多くの人間が「裏切り」や集団の秩序を壊そうとする働きに対して敏感に反応[バッシング]します。(p.p163-165)


サイコパスは状況がどれだけ混乱していても…皆が自信を喪失している状況でも、自信満々にふるまいます。それを評価する人は多いでしょう。こうしたサイコパスの特性を考えると、面接ばかりを重視した採用試験や大学のAO入試には、問題があると言わざるをえません。過剰に魅力的で、確信をもって堂々とした話しぶりをするサイコパスばかりが通る試験になりかねないからです。
同様に、司法の素人に判断させる裁判員制度も、弁舌に長けたサイコパスの存在を考えると、危険きわまりない司法制度だといえるでしょう。(p.186)

女性のサイコパスは「弱い女」「涙を流す女」を攻撃できないという社会通念を利用し、批判する人間がまるで極悪人のように見えるアングルを演出することに長けています。(p.194)

アメリカの産業心理学者ポール・バビアクによれば…「出世した人間にはサイコパスが多い」ことがわかっています。ということは、サイコパスは仕事ができるのでは?と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。…相手が喜ぶことを言って巧みに心理を操る、あるいは逆に相手の弱みを見つけて揺さぶる……そうした話術は得意中の得意です。
…一方、サイコパスは…誠実さを欠き、批判されてもピンときません。だから平気で仕事を先延ばしにしたり、約束を破ったりしてしまいます。衝動性が高いため、几帳面さを求められる仕事や、協調性や忍耐が求められるチームワークが苦手です。しゃべりは得意で存在感はあるのですが、よくよく精査してみると、意外と業績は低いことも少なくありません。
つまり口ばかりうまくて、地道な仕事はできないタイプが多いというわけです。(p.p.182-183)

たとえばアップルコンピュータ(現在のアップル)の共同創設者の一人、スティーブ・ジョブズは、世界で最も洗練された勝ち組サイコパスだったのではないかと考えられます。彼は卓越したコンピュータの知識があるわけでもなく、デザインその他の実務的なビジネススキルさえも持ち合わせていませんでしたが、天才的なプレゼントとネゴシエーションの才能によって全世界の人びとを虜にした人物でした。…一方で、アップルの元・技術者や妻子に対する容赦ないふるまい、追い詰め方は相当なものだったことが知られています。利用できると感じた人間には「すばらしい」と言ってすり寄り、しかし、利用し終わった人間や対立した相手に対しては舌鋒鋭く攻撃し、その時々で付き合う人間をどんどん変え、古い知り合いを切り捨てていきました。(p.184)


サイコパスの多い職業トップ10


1位 企業の最高経営責任者
2位 弁護士
3位 マスコミ、報道関係(テレビ/ラジオ)
4位 セールス
5位 外科医
6位 ジャーナリスト
7位 警官
8位 聖職者
9位 シェフ
10位 公務員
[ケヴィン・ダットンの調査 p.225]


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