Sunday, March 6, 2011

『コリアン世界の旅』 野村進

「シークレット・メッセージ」

  日本人には知られていない「メーッセージの回路」と
でもいうべきものが、日本にはある。
  たとえば・・・美空ひばりは、なぜ持ち歌の
「悲しい酒」を歌うたびに、きまって涙を流したの
だろうか・・・。
  ソフトバンク社長の孫正義は、一九九六年二月の
「毎日経済人賞」の授賞式でなぜスピーチのさなかに
突然声を詰まらせ絶句してしまったのか・・・。
美空ひばりと孫正義の涙の意味を、日本人とはまったく
違う形で理解している人々が、私たちのすぐそばにいる。
それは・・・韓国・朝鮮系の人たちである・・・。
都はるみの初期の大ヒット曲に「涙の連絡船」という歌が
あった。・・・朝鮮半島に残した肉親のことや、昭和三十年代に
いわゆる「帰国船」に乗って新潟から北朝鮮へ向かったまま
離ればなれになってしまった家族のことを、暗に歌っている歌と
解釈してきた人が少なからずいるのである。
・・・原尻英樹・放送大学助教授が
「シークレット・メッセージ」と名づけたこのような
コミュニケーションが日本人には少しも気づかれることなく、
ひっそり続けられている。

(野村進『コリアン世界の旅』プロローグより) 

No comments:

Post a Comment